瀬尾: 巨額の損失隠しが発覚した総合光学機器メーカーのオリンパス。それが明るみに出されたのは、経済誌『月刊FACTA』のスクープ記事と、その疑惑を追及しようとして逆に社長の座を追われたオリンパスの元社長マイケル・ウッドフォード氏の告発によるものでした。その後オリンパスは粉飾決算を認め、それに関わったとされる菊川剛前会長と森久志前副社長をはじめ指南役とされる投資会社社長など計7人が逮捕されました。
このオリンパス事件の本質とはどのようなものだったのか。オリンパスの元社長であるマイケル・ウッドフォードさん、事件をスクープしたジャーナリストの山口義正さん、そしてジャーナリストの田原総一朗さんを招いて、オリンパス事件のすべてを明らかにしたいと思います。
ウッドフォードさんは『解任』という本を早川書房から出版されました。そして、山口義正さんは講談社から『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』という本を出版されました。「サムライと愚か者」というのはこの問題の重要なキーワードですから、今日の対談のなかでも出てくるかもしれません。それでは本題に入りたいと思います。田原さん、よろしくお願いします。
田原: 早速ウッドフォードさんにお聞きしたいんですが、ウッドフォードさんは本のなかでも「私はオリンパスを愛している」と何度も書いていらっしゃるんですが、オリンパスという会社の特長、良さというのはどの辺りでしょうか?
ウッドフォード: まず製品ですね。日本ならではの技術力・開発力が表れている内視鏡などの製品です。
田原: 山口さんは、事件の前にはオリンパスをどうとらえていましたか?
山口: やっぱりニコンやキヤノンと並んで洗練された優良企業だと思っていました。
田原: こんな事件が起きようはずがないと思っていたわけですね?
山口: 「起きようはずがない」とすら思っていませんでしたね。社名やロゴのイメージとかそういうものからしても、とてもスマートな会社というイメージを抱いていました。
田原: またウッドフォードさんにお聞きしたいんですが、オリンパスはウッドフォードさんが社長におなりになる前からこのスキャンダルがあって、つまり企業買収に関して不明瞭な巨額のカネが動いていた、と。
そういう事件が起きたあとにウッドフォードさんを社長にしていますが、なんでウッドフォードさんを社長にしたんでしょうか。ウッドフォードさんを社長にしたら、バレるに決まっているでしょう?
ウッドフォード: 良い質問ですね。おっしゃる通りなんですが、私は2005年にも2008年にも欧州で不正を告発したことがあって、告発者として知られている経営者でした。ですから、それを知らなかったはずはないと思います。しかし、オリンパスにたいへんな債務がのしかかっていた時期だったので、おそらく菊川さんは、私が活発なキャッシュフローを生み出す事業を育ててくれると思っていたのじゃないでしょうか。
田原: そうすると、ウッドフォードさんもこのスキャンダルを覆い隠してくれると思っていたんでしょうか?
ウッドフォード: おそらく菊川さんは、私が永遠に気づかないと思っていたんじゃないかと思います。現に山口さんが書いた『FACTA』の記事による暴露がなければ、私は永遠に気づかなかったかもしれません。