犬も疲れきったら自制心が弱って危険な行為を避けなくなる!

 体力的に疲れ切った時、ストレスで精神的な集中力を失ってしまった時、人間はいわゆる「ヒヤリ・ハット(突発的な事象やミスでヒヤリとしたりハッとしたりする事故一歩手前の状況)」の状態が多くなり、ついにはセルフコントロール能力が低下し、無意識に危険な行為を行ったり衝動的になって事故に巻き込まれてしまうことがあることが、さまざまな研究から知られています。

 犬もまた人間同様、疲れてしまうといつもと違って危険な行為を避けなくなってしまうことが、北フランス・リール大学のHolly Miller博士らがPsychonomic Bulletin & Review 2012年3月30日オンライン版に発表した研究で明らかになりました。

 博士らは10分間静かにお座りしていることができる ように、複数の犬を訓練して実験を行いました。実験ではこれらの犬を2グループに分け、Aグループは10分間お座りをさせた後、つまりセルフコントロールを発揮させられ疲れた状態になった後で、Bグループは自由にしていた後、つまり精神心的疲労がない状態で、それぞれ別の部屋に連れて行かれ、4分間自由に 動き回ることができるようにされました。

 ただし、この部屋にはケージがあり実験用の犬たちが見たことがない犬が入れられており、なおかつ凶暴なタイプで吠えたり唸ったりしていました。犬は見知らぬ犬がいる場合、本能的には近寄ろうとしますが、状況によっては危険もあるので、犬なりにセルフコントロールして危険そうな場合は避けようとすることが分かっています。

 4分間の自由行動時間に、それぞれの犬がどこにいたのかを分析した結果、10分間お座りをさせられてセルフコントロール能力を使ってしまった精神的に疲労しているAグループの犬のほうが、Bグループの精神的疲労のない犬よりも、凶暴な犬の近くに長時間いたことがわかりました。つまり10分間のお座りというセルフコントロールのための精神的疲労により、犬もより衝動的になり危険な行為を犯しやすくなることが確認されたということです。

 博士らはこの結果について、セルフコントロールがもたらす精神的な疲労は人間に特殊なものではなく、犬も同様であり、犬に何らかの作業をさせる場合には、こうしたことを考慮すべきだろうとしています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子
Psychonomic Bulletin & Review 2012年3月30日オンライン版