イランの核問題でヨーロッパは緊張している。日本は、北朝鮮の核でひやひやしているのであまりニュースにならないが、ドイツでは毎日トップニュースの一つだ。本当は、イランがくしゃみをしただけで病気になるのは、石油の中東依存度が際立って高い日本のはずなのに、危機感はあまりない。
4月8日の夜もニュースを見ていたら、この問題を協議するため来週末にイスタンブールで始まるはずの会議(国連安保理常任理事国5ヵ国とドイツが参加)が、始まる前からすでに紛糾している様子が報じられていた。オバマ大統領はこの会議で、イランが地下核施設を閉鎖するよう提案するらしいが、イランはそういう要求は出たとしても呑めないと断言。まあ、考えてみれば、当たり前だろう。
イランは、自国の核開発は平和利用のためだと常に主張している。もちろんアメリカとイスラエルは信じず、平和利用ならば、なぜに強固な要塞を作って、その中でこそこそやっているのだと考える。アメリカはすでに、この超堅固な要塞を破壊できる超強力なミサイルを開発したとも報じられ、ニュースでその映像も出ていたが、ちょっと嘘っぽい。戦争になどなれば、中東もヨーロッパも被害甚大だ。
ただ、イスラエルが焦っているのは確かだ。これ以上無為に時間が経過して、イランが本当に核兵器を手にしてしまっては大変なことになる。運がよければ、永代イランに隷属、運が悪ければ、国が無くなる。だから、そうなる前に単独でもイラン攻撃に乗り出すつもりらしいが、アメリカは今のところ、一緒に出撃しようとは言わない。アフガニスタンやイラクから必死の思いで撤退している最中なのに、新たに中東へ兵を進めることは難しいのだろう。
去年11月、IAEA(国際原子力機関)は、イランが核兵器を製造している証拠をつかんだというレポートを提出した。資料はアメリカが提出した。亡命中のイランの反政府勢力が、イラン政府から盗んできたというパソコンに入っていたデータだそうだ。
それ以来イラン問題は沸騰しているのだが、湾岸戦争の時だってアメリカは、イラクは大量殺人兵器を所有しているという報告を根拠に戦争をはじめ、結局、それはでっち上げだったのだから、今度もあてになるかどうかわからない。ひょっとすると、イランに対する世界の警戒度を高め、制裁を強めるための作戦かもしれない。
しかも、IAEAの現在の事務局長、天野之弥氏は外務官僚で、「高官人事からイランの核兵器開発疑惑まで、あらゆる戦略的な重要決定について、断固として米側に立つ」と言っていたことが「ウィキリークス」により暴露された人物だ。彼のレポートの内容がアメリカの意図に沿っていたとしても、さして不思議はない。
いずれにしても、イスラエルのポーズもアメリカのポーズも、ニュースに出ているものなど100%は信じられない。真実は水面下で進んでいるはずで、ちょっと気味が悪い。
と、そう思いながら、そのきな臭いニュースを見ていたら、突然、晴れやかな笑顔でイランのアハマディネジャド大統領に右手を出しながら近づく鳩山元首相が出てきたので、私は腰を抜かすほどびっくりしてしまった。あまりにも現状にふさわしくない笑顔だ。
いったい何をしに行ったのかと耳を澄ますと、アナウンスは、「日本の代表団に対してアハマディネジャド大統領は、新しく始まる核問題の協議が難しいものになるだろうということを告知した」の一言。要するに、特記に値するべき事柄は、何も話し合われなかったに違いない。
慌てて日本のニュースを検索したら、鳩山氏は自民、民主、アメリカなど各方面の反対を振り切って出発した模様だ。氏のホームページには、「本問題が一朝一夕に解決しがたいことは当然ながら、少なくとも国際社会の声を届け、問題解決に向けた環境整備の一助となればと考えています」と書いてある。ここまで問題がこんがらがっているのに、自分が事態打開を図れると考えているのは立派だが、非現実的。お得意の「友愛」とはいえ、米国とイスラエルとイランの間で友愛の架け橋になろうというアイデアは、あまりにも幼稚だ。