だからプロ野球は面白い 中日・森繁和元ヘッドコーチが初めて明かす 「参謀」---落合博満は何が違うのか

週刊現代 プロフィール

 もちろん監督も私もそんなことは百も承知だ。それでも、少しの例外を許したり、政治的配慮で指導も情報管理も信用できないOBコーチを起用したり、そんな大人の配慮はいっさいしようとしなかった。

 すべては、私たちの契約が「シーズン優勝と日本一を勝ち取ること」にあったからである。優勝を最優先に考える。優勝のためにならないことは絶対にしない。

 この件に関しては監督もわれわれコーチ陣も、最後まで妥協することはなかった。

「へえ、今日は先発そいつなんだ」

 と、試合前のメンバー表を書くときに監督に言われたこともある。監督に事前に先発を告げなかったことも二度や三度ではない。

「オレが先発知らないんだから、情報が漏れることもないだろう」

 というわけだ。

 とはいえ、事前に投手起用で悩むと相談することはよくあった。

 たとえば3連戦の初戦に勝ったときに、あえて第2戦や第3戦の先発予定を変更して、ローテーションの谷間にする場合があった。

 3連敗がなくなったから、次のカードに備えたいというケース。

 そのうえで、たとえば前の日に右投手が投げて一応は勝ったけれど、その右投手が、けっこう打たれた場合もある。その場合、第2戦にもう一回右投手を持ってくるのがいいのか、少し力は落ちるけれども左ピッチャーを使うべきか悩むことが何度かあった。相手打線が右ピッチャーにはタイミングが合っているというイヤな感じがあるときだ。

 正直、正解は結果を見てみないとわからない。

「監督、本当は今日投げさせる予定だったピッチャーを1日ずらして、3戦目に持っていきますよ」

「あ、いいよ。なんで?」

「3戦目に予定されていたピッチャーは本当は次のカードの頭にしたかったので。昨日勝ったし、そのほうがよいでしょう。問題は今日誰にするか。右の山井(大介)か左の長峰(昌司・現オリックス)か迷っているんです。昨日右ピッチャーで打たれているので」

 こんな感じで話しながら先発を決めることが多かった。だが、このときの答えには驚いた。

「二人でジャンケンさせれば?」