問い合わせ殺到!副作用なし 末期がんにも効果 夢の治療薬「がんワクチン」受診可能な病院

週刊現代 プロフィール

 長野から通院している田中和人さん(64歳・仮名)は、抗がん剤が効きにくい扁平上皮がんで、手術で右肺を全摘した。術後に再発をしたとき、主治医から「抗がん剤は間質性肺炎を起こす危険が高いので勧められない。治療法はもうない」と説明された。

「でも、まだ元気だし、私は最後までがんに立ち向かっていたかった。そんな時、市民公開講座で寺本医師の講演を聞いた。適応を調べ、がんワクチン治療をやってみますかと言ってもらった時はうれしかった」と田中さん。ワクチン治療を開始してからも、再発を繰り返し、がんは消えてはくれなかったが、会社の仕事を続け、片肺でも好きなゴルフをしながら4年間、普通に暮らしてくることができた。

 寺本医師は、もう治療法がないといわれた肺がん患者43人に、樹状細胞ワクチン療法(2週間に1回の投与で3ヵ月)を実施したところ、評価可能だった人は26人。そのうち腫瘍が縮小または不変だった人が15人(うち、30%以上縮小した人が1人)、腫瘍が大きくなった人が10人だった。

「他に打つ手がない肺がんは非常にきびしく、現状維持が精一杯なのですが、評価可能だった患者の6割に病勢コントロールがついた意義はかなり大きいと考えています」(寺本医師)

抗がん剤よりいい

 悪性脳腫瘍(グリオーマ)も予後が悪いことで知られる難治性のがんだが、「WT1」というがんペプチドワクチン療法の臨床研究に取り組む大阪大学医学部附属病院脳神経外科准教授の橋本直哉医師は、「有効性に期待が持てる結果が出てきている」と語る。

 通常、ある種のグリオーマの再発は、5年生存率が8%といわれている。WT1のがんペプチドワクチンを始めて再発から約6ヵ月間、悪化することなく生存していた人は3割を超えた。抗がん剤治療を実施したときの1割よりも良い結果が得られたのだ。治療開始時に46歳だった女性は、4年半で腫瘍が消失し、現在7年目。今も月に1度外来通院し、ワクチンを打ち続けているという。

 劇的な効果が出る人がいる一方で、がんワクチンがまったく効かないという人がいるのも現実である。研究が進むペプチドワクチンのがん抗原を、すべてのがん患者が持っているわけではないし、抗体を持っていても、残念ながら効果が現れないケースがある。医療機関では多くの患者が適合する抗原を選んでいるが、それでも、該当する患者が全体の6~7割というものがほとんどだ。

 滋賀医大の樹状細胞ワクチン療法では、がん抗原MUC1に適合する肺がん患者は全体の「5~7割」といわれている。

「がんワクチンに適応する抗体を持っているかどうかは、患者さんのがん細胞を特殊な溶液で染色すれば簡単にわかります。中には0という人もいるので、うちでは必ず生検組織か、手術の際のがん組織をお持ち頂くことにしています」(寺本医師)

 これに対し、大阪大学がターゲットにしているWT1というがん抗原は、悪性リンパ腫を除き、多くのがんに存在することがわかっているものだ。そのため、消化器がんから血液がんに至るまで多岐にわたるがんを対象に臨床研究をしているのも大阪大学の特色だろう。WT1に対する関心は世界でも高く、アメリカの権威ある国立機関NCIは、'09年に「注目すべきがん抗原75種の中で最も臨床応用すべきがん抗原はWT1」と発表している。