問い合わせ殺到!副作用なし 末期がんにも効果 夢の治療薬「がんワクチン」受診可能な病院

週刊現代 プロフィール

 週に1度、脚の付け根(鼠径部)にペプチドワクチンの注射を打ち始めて1ヵ月後。それまで抗がん剤がまったく効かずに増大を続けていた肝臓のがんは進行が止まった。その後、半年経つ頃から徐々に小さくなりはじめ、1年後に残っていたのはごくわずか。本人の希望によりワクチンの投与はここでやめたが、その後もがんは縮小を続け、がんの発見から3年経った現在、画像上は完全に消失した完全寛解という状態にある---。

「がんワクチン」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。2月6日にNHKの『あさイチ』で紹介されたことで注目が集まり、臨床試験を実施している多くの医療機関に問い合わせが殺到したがんの治療法である。

 そもそもがんワクチンとは、がん細胞の表面にある特異な物質(がん抗原)を目がけて攻撃し、がん細胞だけを叩くという免疫療法の一種。子宮頸がんなどの病気を「予防」するワクチンもあるが、これはがんを「治療」するためのもの。がん抗原は多くの種類があり、どれをどのように攻撃するかによってワクチンの種類も異なってくる。がんペプチドワクチンや樹状細胞ワクチンががんワクチンの代表的なものだ。

 抗がん剤や放射線治療のような副作用がほとんどないのが大きなメリットとして挙げられる。いずれも創薬に至る前の試験段階のものであり、治療効果が科学的に認められているわけではないのだが、新たながん治療として期待が寄せられている。

 井上さんのがんペプチドワクチン療法を担当した浅原医師は「彼女は、すい臓がんの中でも悪性度の高い『退形成がんの巨細胞型』という症例も少ないがんで、通常は手術をしても平均余命は10ヵ月程度といわれています。術後間もない再発だったことも考えると、想像をはるかに超える治療効果でした」と分析する。現在も3ヵ月ごとに採血とCT検査で経過を見ているが、「異常なし」が続いている。

「ワクチン治療中から食事療法による体質改善と、前向きな人が多くて情報交換もできる患者会の集まりに2ヵ月おきに参加して、気持ちを落とさない生活を心がけていました。それは、今も再発予防のために続けています」

 そう話す井上さんは、夫、親、そして3歳になる娘との時間を大切に、日々を過ごしている。

肺がんにも効果が

 浅原医師が井上さんに投与したのは、東大医科学研究所が中心となって開発されたすい臓がんのペプチドワクチン。このほかにも、全国の大学病院単位でさまざまながん抗原を使ったペプチドワクチンの研究が行われており、たとえば久留米大学病院は、国内で唯一、がんワクチンの専門外来を持つ。それも、患者の血液を調べて効果が高いと思われるがん抗原の上位4種に適合するワクチンを、その人専用の治療薬として打っていくテーラーメードの手法を取っている。

 滋賀医科大学医学部附属病院呼吸器外科の寺本晃治医師が行っているのが、'05年に先進医療として認可を受けた樹状細胞ワクチン療法。これもがんワクチンのひとつだ。採血して抽出した患者の樹状細胞を、肺がん細胞の目印として存在するがん抗原「MUC1」と一緒に培養する。これを患者の体内に戻すと、がんを攻撃するキラーT細胞というリンパ球が「MUC1を標的に攻撃せよ」と樹状細胞から指令を受け、がん細胞だけに攻撃を始めるのだ。