[プロ野球]
巨人・岸敬祐「左のスペシャリストへ」

アイランドリーグ出身NPB選手は今 Vol.2
スポーツコミュニケーションズ

新球スクリューで支配下へ

 調子を取り戻した左腕は7月に再び2軍へ昇格。結局、20試合に登板して1勝0敗、防御率2.25でシーズンを終えた。“左殺し”の武器はシュートだ。左打者の内角を思い切って突くボールは勇気がいる。だが、「これが生き残るための手段」と徹底して投げ続けた結果、「左バッターに投げれば大丈夫」と胸を張れるほどになった。

 次なる課題は右バッター対策だ。左のワンポイントでマウンドに上がっても、勝負どころでは相手ベンチも右の代打を送り込んでくる。秋の宮崎フェニックスリーグからは右打者を抑える変化球としてスクリューボールを磨いた。関西独立リーグ時代に習得していたものの、その後、封印していたボールだった。

「落ちながら、右バッターの外角に逃げていくボールです。最初はコーチの反応もイマイチでしたが、実戦で投げていくうちに右打者から空振りを取れるようになりました。“これは使えるぞ”と」

 目指すはソフトバンクの森福允彦。年齢も25歳で同学年だ。日本シリーズで無死満塁の大ピンチを切り抜けた場面をテレビで観て鳥肌が立った。
「右バッターが3人出てきて抑えたんですからね。左だけのピッチャーじゃない。僕も最初は左のワンポイントかもしれないけど、いずれは1イニングを任せてもらえるピッチャーになりたいと感じました」

 岸には夢がある。
「お金を稼いで、病気をしたり、恵まれない環境にいる子どもたちに寄附ができる存在になりたい」

 自身も小さい頃はアトピーに悩まされた。身長は180センチあるが、体重は74キロと決して大柄ではない。それだけに病気の子どもたち、体の小さな子どもたちの力になりたいと考えている。
「だから、まずは早く支配下登録されて1軍で投げること。そして1年でも長く、この世界でプレーすること。志高くやっていきたいと思います」

 マウンドに立つのはひとりだが、決して孤独ではない。2人の兄、そして多くの子どもたちの思いを左腕に込められるピッチャーへ――。関西、四国と2つの独立リーグを経験した“雑草”は上へ上へと成長を続ける。

岸敬祐(きし・けいすけ)プロフィール>
1987年1月16日、兵庫県出身。左投左打の投手。関西学院高から関西学院大を経て、09年に関西独立リーグの大阪入り。年間MVP、最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを獲得する。10年はアイランドリーグの愛媛へ。リリーフで持ち味を発揮し、同年の育成ドラフトで巨人から育成2位指名を受けて入団。140キロ台のストレートにシュートなどの変化球を投げ分け、打たせて取る投球が持ち味。身長180センチ。74キロ。背番号017。

(石田洋之)