円高トレンドの修正局面を意識し始めた投機筋

欧米系のヘッジファンドのマネジャー連中の間で、「円高のトレンドが修正局面に入り始めている」という認識が少しずつ浸透している。それに伴い、彼らの為替ポジションは今までの円買い・ドル売りから、徐々に円売り・ドル買い、あるいは円売り・ユーロ買いに変化している。それは、シカゴのIMM為替先物市場の状況を見ても分る。
こうした変化の背景には、米国経済の回復期待が高まっていることや、わが国の貿易収支の赤字基調が続いていることなどがある。また、ユーロ圏の問題に関して、ギリシャの無秩序なデフォルトという最悪のシナリオが回避されたことも大きく影響している。
重要なポイントは、そうした為替動向の持続性だ。米国の経済指標をみる限り、堅調な展開を示す数字が多く、当面は、円が弱含みの展開が続くとみられる。ただ、ユーロの問題などは本源的な原因が解消されたわけではない。その懸念が再燃するようだと、安全通貨である円が買われやすくなる場面はあるだろう。
高まる米国経済の回復期待
現在、世界経済の景色を大きく変えている、最も大きな要素は米国経済の回復期待が高まっていることだ。つい最近まで、米国経済は不動産バブルの後始末に苦しみ、最悪のケースでは"二番底"に落ちこむとの見方が有力だった。
ところが、その米国経済が、金融緩和政策などの支援もあり、緩やかながらしっかりした足取りで回復基調を歩み出している。このところ、遅れていた労働市場は、回復傾向を鮮明化しており失業率も8.3%まで下がっている。それに伴い、株式市場はしっかりした展開になっており、高額商品の売り上げも徐々に回復傾向を示している。
米国経済に対する回復期待が高まると、"経済の体温計"である金利水準は上昇傾向を辿る。ヘッジファンドが注目する、米国債2年物とわが国国債2年物の利回り格差=スプレッドは少しずつ拡大している。それに伴い、ヘッジファンドなどの投機筋は、今までの円買い・ドル売りのポジションを手仕舞い、円売り・ドル買いのポジションに替え始めている。