勝ち組企業の必要条件

21世紀の世界の勝ち組企業の1社といえば、迷わず米国のアップルをあげる。同社が携帯音楽プレーヤーの初代iPodを発表したのは2001年。03年には、音楽配信サービスを開始した。iTunes Storeで購入した楽曲をiTunes という専用ソフトでパソコンにダウンロードする。これをiPodに取り込んで、気軽に自分の好きな音楽を持ち歩くスタイルを定着させた。
それまでの常識でいえば、ハードメーカーは携帯音楽プレーヤーを売り、音楽配信は著作権を持つレコード会社と考える。実は、ソニーはアップルに先立ち、1999年に音楽配信対応のウォークマンを発売している。だが、音楽配信にまで乗り出すことはなかった。それが常識だったからだ。
アップルは、そんな常識を覆した。「果たしてそんなことができるのか?」という非常識な課題に果敢に挑戦し、見事にこれを達成して新しい常識をつくりだした。これは21世紀の勝ち組企業に総じていえる特徴で、グーグルやアマゾン然り。非常識なレベルで成功を求めようとするのであれば、普通のことを普通の範囲で合理的にやっていたのではまず無理だ。どんなに立派な経営戦略を打ち立てたとしても、中身が常識的なレベルであるかぎり、普通の企業の群れの中から抜け出すことはできないのである。