「普天間移設問題」は鳩山政権内の権力闘争だ

官僚vs非官僚のバトルに首相は決断できるのか
佐藤 優 プロフィール

 下地氏が公約に違反していることは明白だ。下地氏は、「権力の文法」に敏感だ。本音では外務官僚も防衛官僚も「下地案」が実現すると思っていない。なぜなら、キャンプ・シュワブ陸上案も嘉手納統合案もかつて米側に拒否された経緯があるからだ。

 しかし、官僚は、沖縄出身の国会議員が、沖縄県内移設を提案したことで、これで普天間問題の解決に向けた突破口を切り開くことができたと考えている。地元の沖縄で窮地に陥った下地氏は、今後、外務官僚、防衛官僚の力にさらに依存して、政治家としての生き残りを図ることと思う。

 ここで、民主党の小沢一郎幹事長が重要な態度表明をした。

<民主党の小沢一郎幹事長が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、政府が検討しているキャンプ・シュワブ陸上部(名護市)などの県内移設案について
「(参院選前に政権の)イメージダウンも甚だしく、選挙にならない」
などと否定的な見解を与党幹部に示していたことが7日分かった。

両陣営の対立の結果、首相は

 小沢氏は政策決定の内閣一元化の観点から、普天間問題でも基本的に内閣の判断を尊重する考えを示している。ただ鳩山由紀夫首相は移設先候補地の決定に際し小沢氏に同意を求めるとみられ、小沢氏が異論を唱えた場合、首相らは対応に苦慮しそうだ。

 小沢氏は今月に入り与党幹部と会談。関係者によると、この席で「沖縄県議会が全会一致で国外・県外移設の意見書を可決したのに、県内とすることができるわけがない」と指摘。さらに「首相も『県外か国外』と言っていた。首相も選挙に不利になることは分かっている」と県内移設に反対姿勢を示したという。

 政府、与党の沖縄基地問題検討委員会(委員長・平野博文官房長官)の協議の進め方に関しても与党の意見反映が不十分で外務、防衛両省が主導する議論になっていることに不満を漏らしたという。>(3月8日琉球新報)

 鈴木宗男衆議院外務委員長(新党大地代表)も、小沢氏と見解を共有している。3月7日、筆者の電話照会に対し、鈴木氏は、「1月24日の名護市長選挙で表明された民意を率直に受け止めるべきだ。キャンプ・シュワブの陸上、沿岸、沖合のいずれもだめだ。民主主義を基本に考えなくてはいけない」と述べた。

 これで、「選挙で選ばれた政治家によって日本国家は支配されるべきである」と考える小沢幹事長、鈴木外務委員長らの非官僚依存型の政治家と、沖縄県内に普天間飛行場の移設先を見つけ問題の幕引きを急ぐ外務官僚、防衛官僚とその意向を体現した下地衆議院議員、北澤防衛大臣、平野官房長官という対立図式がはっきりした。

 さらに社民党が小沢氏の陣営に加わっている。

 この綱引きの中で、鳩山由紀夫首相がどのような決断をするであろうか? 両陣営の対立が均衡を維持する場合、鳩山首相が5月中に「今月中の決断はしない」という"決断"をする可能性がでてきたと筆者は考える。

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著者:佐藤優
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