堤堯 第1回「富士レイクサイドCCに降る無情の雨・・・伝説の青木功事件」

島地 勝彦 プロフィール

瀬尾 それで当時、青木さんとまだ面識がなかった堤さんに、シマジさんが「青木功とラウンドするからいっしょにこないか」って声を掛けたんですよね。

 神様とラウンドができる! 夢かと思ったね。「シマちゃん、ホントかッ?」「ホントですよ」と、シマちゃんは手帳を開いて富士レイクサイドCCの予定日を指定したんだ。オレも手帳に書き込む。さあ、それからというもの、その日を思い描いて仕事もロクに手がつかない。

立木 ところがその日は北海道の全日空オープン三日目の土曜日で、普通ならプロが来られるわけがないんだよね。 

 しばらくしてオレもそれに気がついた。シマちゃんに「どうなってるんだ」と電話したところ、「大丈夫、任せておいて下さい。間違いなく青ちゃんは当日、富士レイクサイドCCに現れます」という。「だって予選落ちでもしなきゃ来られない。青木の予選落ちなんて、何年に一回あるかないかの珍事じゃないか」「だからそういうことになってるんです」という。

 こうなると半信半疑だ。前日の金曜日の夕刻、オレは仕事の合間にサンケイスポーツに電話を入れて「読者ですが、青木プロは予選を通りましたか」と訊いた。「1ストローク差で予選落ちです」という返事だ。いやあ驚いたねえ。珍事が現実となったわけよ。こりゃ青木はよほどシマちゃんとの約束を大事にしているんだな、いまごろ帰路の飛行機に乗っているに違いない、いよいよオレの夢が実現する、明日に備えて、早めにいそいそと家路についたんだ。

シマジ これは神のみぞ知るですよ。青木の予選落ちなんて、わたしもテレビを見てまさかと思ってた。イタズラにも強運っていうやつがあるんだと思ったくらいです。

 オレはよせばいいのに、「おや、珍しくお早いお帰りで。どうかしたんですか」と会社の部下から問われて、「明日は青木功とゴルフだ。だから失敬する」と自慢げに触れ回った。

瀬尾 豪傑編集長もその夜は眠れなかったでしょう。