二宮清純レポート
中日ドラゴンズ 荒木雅博 内野手34歳
「名手の誇り、職人の意地」

週刊現代 プロフィール

「昨年のキャンプの時です。ヤクルトの宮本(慎也)さんに〝食事に行きましょう〟と誘ったんです。名手からいろいろと話をお伺いしようと・・・・・・」

 言うまでもなく宮本はショートで6回、ゴールデングラブ賞を獲得している名手である。荒木にすれば〝溺れる者はワラをも掴む〟の心境だった。

 名手のアドバイスはシンプルだった。

「ボールの追い方を考えなさい」

 この一言で目の前の霧が晴れた。そうか、そういうことだったのか・・・・・・。

 荒木の解説---。

「セカンドの習性としてはボテボテのゴロを内野安打にしたくないんです。だから最初から前で守って打球を横に追っていく。それによって少々、送球の体勢が崩れてもファーストまでは近いから、何とかアウトにすることができる。

 ところがショートはそうはいかない。横に追っていってグラブに入れただけではファーストには間に合わない。ショートの場合、斜めから回り込むように打球を追い込んで、すぐにスローイングできる体勢をつくらなければいけないんです。

 そのために一番、重要なのは足。足が使えなければショートは守れない。僕の送球が安定しなかったのも、足が使えていなかったのが原因です。

 昨年、それを実践してみて、やっと落合さんが言っていたことが理解できました。〝あっ、監督が言っていたのは、これだったのか!〟と。落合さんは常々〝下半身を使え〟と言っていましたから・・・・・・」

打球の「質」が見える

 荒木は'95年、ドラフト1位で熊本工高から中日に入団した。福留孝介(シカゴ・ホワイトソックス)、原俊介(元巨人)の〝ハズレのハズレ1位〟だった。

 その年の高校生内野手は銚子商の澤井良輔(元千葉ロッテ)とPL学園の福留が東西の両横綱だった。荒木は2度、甲子園に出場していたものの、目立った活躍はしていなかった。

「実は2年の冬、全日本高校選抜チームが結成されてオーストラリアに行ったのですが、福留君や澤井君はメンバーに選ばれたのに荒木は選ばれなかった。そうした悔しさがプロでの成長のバネになったと思っています」

 そう振り返るのは熊本工時代の監督、山口俊介(現熊本大コーチ)だ。元巨人の緒方耕一や広島の前田智徳も、山口の教え子だ。