二宮清純レポート
中日ドラゴンズ 荒木雅博 内野手34歳
「名手の誇り、職人の意地」

週刊現代 プロフィール

 暴投だけじゃありません。トンネルはするわ、はじくわ・・・・・・。〝オレ、こんなんで試合に出ていいのかな〟と落ち込みました。

 その頃は、冗談ではなく落合さんを恨みました。〝オレの野球人生、どうしてくれるんだ!?〟って。悔しくて眠れない日が続きました・・・・・・」

 セカンドとショート、同じ内野のポジションでありながら、動きはまるで違う。頭ではわかっていても、体がいうことをきかない。体に染みついた慣れとは、それくらい恐ろしいものなのだ。

 呻吟する荒木を目の前にしながら、しかし落合は一度も助け船を出さなかった。そればかりか、傷口に塩を塗り込むように、こう言い放った。

「オマエ、もう戻るところはないからな。ここでダメなら、それは野球をやめる時だ」

 血も涙もないとは、このことだ。ここまで冷酷に言われれば荒木でなくても後ろから首を絞めたくなるだろう。

 荒木は腹をくくった。

「僕にも意地がありましたよ。このままじゃ終われないって・・・・・・」

宮本慎也のアドバイス

 そもそも、落合はなぜ円満なカップルに波風を立てるような無粋なことをしたのか。

 それに対する落合の答えはこうだ。

〈守備の名手をあえてコンバートした大きな理由のひとつは、井端と荒木の守備に対する意識を高め、より高い目標を持ってもらうためだ。

 若い選手はプロ野球という世界に〝慣れる〟ことが肝心なのだが、数年にわたって実績を残しているレギュラークラスの選手からは、〝慣れによる停滞〟を取り除かなければいけない。

(中略)

 監督という立場でドラゴンズの2、3年先を考えると、井端の後釜に据えられる遊撃手が見当たらなかった。そこに荒木を据えて2、3年後も万全にしておきたいという事情もあったわけである〉(自著『采配』ダイヤモンド社)

 '10年、荒木は12球団で2番目に多い20個のエラーを記録した。オレを使い続ける監督が悪いと開き直ったところで問題は何も解決しない。助けを求めた先は他球団の先輩だった。