岡田正彦・新潟大学医学部教授 長生きしたければがん検診は受けるな

週刊現代 プロフィール

 脳ドックも毎年多くの人が受診しています。検診を受けた結果、小さな脳動脈瘤が見つかり、手術で取り去ることができた---そう聞いたら、それは良かったと思うでしょう。脳動脈瘤が破裂すれば、命にかかわるということは広く知られていますから。

 しかし、'03年に世界13ヵ国の医師と研究者が5年間放置した脳動脈瘤が破裂した割合を調査したところ、動脈瘤の大きさが7mm未満で0・2%、7~9mmで0・5%、9mm超で3・1%だけという結果でした。一方で、破裂を予防するために手術を行った場合、1年後に2・7%が治療そのものが原因で亡くなり、半身麻痺などの障害を加えると、じつに12%が死亡もしくは障害を受けていたことが明らかになったのです。

 日本政府が熱心に進めてきたメタボ健診も、有効性は認められません。健診では特に腹囲が重視されますが、欧米の研究で、腹囲の大小と寿命は無関係ということが実証されていますし、メタボリックシンドロームという病気自体、そもそも存在しないのでは、と思っています。最初にこの言葉を使い始めたWHO(世界保健機関)も、'06年以降は使わなくなりました。

検査が余病を引き起こす

 メタボ健診の大罪は、血圧が少しだけ高いと判定された人にも降圧剤が処方されてしまうことです。調査の結果、降圧剤を飲んでも飲まなくても、5年後、10年後の死亡率そのものは変わらないか、飲む薬によっては増えるということがわかっています。降圧剤を飲めば、確かに血圧は下がります。しかし、心筋梗塞を誘発したり、思わぬ余病を引き起こすことがあるのです。

 要するに、早期発見・早期治療をしても結果が変わらないということを、様々なデータが示しているのです。

 検診に大金を費やすより、予防に力を入れるほうが、国民の健康保持にとってはるかに有効だと私は思います。

 がんも、8割方予防できると考えられます。遺伝によって起こるがんは全体の5%ほどだけで、残りの80%は原因が分かってきましたから。

 その一つには、前に述べたエックス線検査があります。そして、今深刻な問題となっている放射能。それ以外にも、よく知られたところでたばこや塩分の取りすぎ、野菜や果物不足も、がんの発症の大きな要因となっています。それらを解消すれば、がんの半分以上は防ぐことができるのです。

 最近では、手軽に野菜の栄養素を摂取できると謳ったジュースやサプリが売られていますが、それでは野菜を食べたのとイコールにはなりません。成分を分解してしまうと、がんを抑制する抗酸化物質が作用しないため、意味がなくなってしまうんです。野菜はぜひ、生で食べるようにしてください。

 生活習慣のちょっとした工夫で、病気は改善されます。薬や手術では、効果があっても微々たるもので、生活習慣を改善した方が、その1・5倍もの効果があります。50%も違うということですから、これに匹敵するような医療行為は他にありません。

 人間の身体は、余計な手を加えずとも、自然に沿った生活をすることで、健康が保たれるようにできているのです。検診大国・日本で健康に生きていくために、過剰検査・過剰医療の恐ろしさをよく理解することが大事なんです。