二宮寿朗「ロマンチスト・反町の挑戦」

二宮 寿朗

“反町流”で挑むイバラの道

 本人が「イバラの道」と表現したように、J2末席からの戦いは厳しいものになるだろう。J2に昇格したとはいっても、環境面が劇的に改善されたわけではない。J2でも珍しいわけではないが、クラブハウスもなければ、専用の練習グラウンドもなく転々としなければならない状況は変わっていない。雪の悩みがあり、練習グラウンドも土が硬いところ、柔らかいところなどマチマチ。冬の時期が長い松本では、グラウンドに併設されたトイレの水が凍って流れないこともある。こういったハングリーな環境のなかで戦ってきた選手たちをベースに、J2の戦いに挑むことになる。

“反町流”は早くも表れている。そのひとつがチームキャプテンを置かないことだ。新体制発表会見の席で、反町監督はこう言った。

「(主将を誰にするか)よく聞かれるが、主将を選ばなきゃいけないのか。選手全員がキャプテンシーを持っていると思うし、全員が主役であってほしい。クラブとも相談しますが、今ここでチーム内のヒエラルキーをつくる必要はないと思います」

 全員にキャプテンシーを持たせ、チームのために働かせる――。
  反町監督は1月下旬からチームを始動させ、まずは選手を徹底的に走らせている。「イバラの道」を覚悟させるように、1年を通して戦える体づくり、メンタルづくりから着手しているのだ。補強はあったにせよ、J2で戦い抜くことを考えれば選手層は厚くない。全体の底上げを図ろうと、指揮官は厳しい目で選手たちを見つめている。反町監督と言えば「右手にロジック(論理)、左手にパッション(情熱)」という言葉が有名だが、この両輪をしっかり回転させていくことで山雅は間違いなく“闘う集団”と化していくことだろう。

 就任1年目の目標は昇格プレーオフ(3~6位によるトーナメント)圏内の6位以内だという。いきなり高い目標を掲げるあたりも実に反町監督らしいところだ。
「やるからには上のステージを目指したいと思う。実力的には力不足なところはあるが、今シーズンは6位までプレーオフにいけるおまけつきのシーズン。12月のプレーオフに行けたらいい」

 ロジック、パッション、そしてロマン――。ニヒルな表情に騙されてはいけない。指揮官・反町康治は新しいチャレンジに、熱い血をたぎらせている。