ある分野における最も著名な三者をさしていう言葉、「御三家」。時代とともに変わる御三家の変遷をクルマ界を中心に検証!
9月30日、元GMの副会長にして米国自動車業界のカリスマ、ボブ・ラッツ氏は、
「世界の自動車メーカーのあらたなBIG3は、GM、フォルクスワーゲン、ヒュンダイ」
と断言したという。えぇっ!? トヨタもホンダも入らず、代わりにヒュンダイ? まぁ、この発言の真意を探るのは後に譲るとして、BIG3=御三家は時代とともに変化するというのは間違いではない。
ってなわけでココではいろんな御三家の変遷を探ってみます。ぜひお楽しみください。
さて、まずはボブ・ラッツ発言の信憑性から探ってみる。教えてくれたのは、経済評論家の水島愛一朗氏だ。
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今回のGMのボブ・ラッツ元副会長の「新ビッグ3」発言の真意を探ると、GMの本音が浮かび上がってくる。
スズキとの提携解消問題を抱えるVWを入れたのは、VWの提携・買収戦略がこれからもGMの脅威になるという判断のためだが、トヨタを外してヒュンダイを入れたのにも理由がある。
もともとGMは世界最強の「トヨタ生産方式」を学ぶため、'84年に合弁会社「NUMMI」を立ち上げ、トヨタのハイブリッドなどの環境対応技術分野での技術提携も行なうなど、蜜月関係が続いていた。
そんななか、フォード、クライスラーと渡り歩いたラッツ氏がGM入りしたのが'98年だ。実はこの年、豊田章男氏はNUMMIの副社長としてカリフォルニアの現地工場に'00年まで駐在しており、ラッツ氏と豊田氏はいわば両社の蜜月関係を象徴する経営者同士だった。
そんな蜜月関係に決定的に亀裂が生じたのがリーマンショックの起きた'08年以降。震源地である北米市場における米ビッグ3のシェアは崩壊し、トヨタは'08年に世界生産・販売台数で77年間世界のトップに君臨したGMを抜き、棚ぼた式に世界一の自動車メーカーとなった。
この頃からラッツ氏の「トヨタ憎し」の発言は際立ってきた。翌'09年6月、GMが経営破綻する状況を目の当たりしたラッツ氏は、'09年後半に発覚したトヨタのリコール問題でトヨタ批判を繰り返すようになり、翌'10年にGMが起こしたリコール問題の原因まで「トヨタが出資する日本の部品メーカーのせいだ」と責任転嫁するありさま。実はこうしたトヨタ批判には、独自のEV技術を開発したGMの自信の裏返しがあった。
さらに、ヒュンダイを新ビッグ3に入れたのは、GMとEV事業で新たな提携関係を結んだ韓国のLGがヒュンダイと提携関係にあるためだが、この発言の裏に、GMが今後環境技術分野で、日本を素通りして韓国と手を組むという「ジャパンパッシング」のメッセージが隠されているのだ。