二宮清純レポート
中日ドラゴンズ・捕手谷繁元信
落合博満前監督から学んだこと

週刊現代 プロフィール

「そうだ」

 佐々木のウイニング・ショットは"魔球"と呼ばれたフォークボールである。キャッチャーがワンバウンドを止めるか、そらすか。それは佐々木にとってピッチングの生命線である。どんなボールでも身を挺して止めようとする秋元を"正妻"に選んだのは、守護神として必然だった。

 佐々木の回想---。

「谷繁は元々、キャッチングのうまいキャッチャーでした。うま過ぎるから体を使わなくても捕れるんです。だから1年目から一軍で使ってもらえた。

 しかし、それによってちょっと天狗になりかけたところがあった。それじゃダメだぞ、と僕は言いたかったんです。でもアイツ、変わりましたよ。それから、ものすごく練習するようになりましたから」

 自他ともに認める負けず嫌い。こうと決めたら、とことん突き進むのが谷繁流である。

 佐々木の信頼を勝ち取るため、連日、谷繁は泥だらけになってワンバウンドと格闘した。気がつくと100個入りのボールケース2箱がカラになっていた。

 '98年、横浜は38年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した。谷繁は134試合に出場し、自身初のベストナイン、ゴールデングラブ賞に輝いた。

 当時の監督、権藤博は谷繁をこう褒めちぎる。

「アイツの感性は素晴らしかった。先乗りスコアラーがああしろ、こうしろと言ったところで、所詮、現場の感性には勝てないんです。中日の連覇もアイツ抜きには考えられませんよ」

見えるようになってきた

 73歳の権藤は今季から中日の投手コーチとして再び谷繁とタッグを組む。谷繁との"感性の激突"を誰よりも楽しみにしている。

「この前、本人に"オレはまだまだ戦い続けるからな"と言うと、"僕も戦い続けます。強くありたいですから"と言ってきました。あれほど頼りになる男はいませんよ」

 中日には現役最年長投手がいる。今年の8月で47歳になる山本昌だ。

「谷繁は終盤に強いキャッチャー」

 こんな表現を用いたのは彼が初めてである。果たして、その心は?

「彼は伏線を張るのがうまいんです。4打席目から逆算してリードをする。だから1打席目や2打席目には"え?"というサインもあるんです。しかし試合の後半になって"なるほど、そういうことだったのか"と気付かされる。ウチが終盤に強い原因は彼のリードにあると考えています」