麒麟の翼「加賀刑事」
阿部 寛と歩く
日本橋人形町「人情下町」

喫茶店「黒茶屋」として登場した「カフェ紅」の中庭で取材。その後阿部さんは、「映画の撮影ではお世話になりました」と、店主と談笑していた

 東野圭吾さんの大ヒットシリーズで加賀恭一郎刑事役を演じる阿部寛さん。今回の映画や、ドラマでのロケ地となった日本橋と人形町を歩いてもらいました。

日本橋の「麒麟の像」の前に立つ阿部さん

 日本橋・人形町を舞台にした東野圭吾原作のドラマ「新参者」では、抜群の洞察力で事件の裏側まで謎解きする加賀刑事を演じた阿部寛さん。まさにハマリ役の加賀シリーズ最新作「麒麟の翼」が阿部さん主演で映画化。1月28日から全国東宝系で公開される。

 ドラマや映画の撮影で阿部さんが連日通った日本橋・人形町界隈だが、果たしてどのような街だと感じたのだろうか。主なロケ地や印象深いスポットを、阿部さんと一緒にライター肥田木奈々と担当編集Yが回り、撮影の思い出や下町人情の魅力を聞きました。

 まずは、この作品の大きなカギとなる日本橋の麒麟の像で待ち合わせ。車から降り立った阿部さんは、シックなグレーのスーツにチェックのシャツ姿。さっそうとカメラの前に立つ。

物静かな姿が絵になる

 身長189cmでスラリと足が長い抜群のスタイルは、スターのオーラが眩しいほど。重厚な麒麟像を見上げる物静かな姿は、さすがに絵になる。ふと見せる独特の鋭い目線は、そこに加賀刑事がいるかのようだ。

 この日は午前中の早い時間だったので、まだ人通りは少なかったが、道行く人は「阿部ちゃんじゃない?」と、目を輝かせながら通り過ぎて行く。

日本橋ゆうま」の店主小田眞春美さんと和やかに思い出話

 続いて人形町へ移動し、観光客にも人気の甘酒横丁へ。ドラマや映画では手作り工芸品の店「ほおづき屋」として登場する「日本橋ゆうま」を覗いてみた。店内には手作りの小物や和雑貨が所せましと並んでいる。映画の宣伝ポスターやドラマの打ち上げのときの集合写真なども飾ってあり、街を挙げてこの作品を、そして阿部さんを応援しているんだなあと、感じさせる店だ。

店主「あら、いらっしゃいませ」

 いかにも気さくそうな店主の小田眞春美さんが顔を出すと、阿部さんの顔もフッとほころんだ。

阿部「お久しぶりですね。お世話になっています」

 眼力が凛々しい阿部さんも素敵だが、照れたように笑うその表情も、またいい。ゆうまには撮影中はもちろん、その後もプライベートで訪れたことがあるとか。ふと、店の入り口付近に置いてある和風の布製バッグを指差した。

阿部「先日はこのバッグを買ったんですよ。撮影で来日していたフランス人の女優さんにプレゼントしたら、とても喜んでくれました」

肥田木「ご自分で選ばれたんですか?」 

「日本橋ゆうま」には、撮影で通ったほか、プライベートでも来店している

阿部「まあ、外国の方なので、何か日本の記念になるような和の贈り物を探していたんです。扇子とか日本風のものをいろいろ考えたのですが、このバッグは台本入れにでもしたら面白いんじゃないかなと思って」

 店内では、メガネケースなどの小物類を手に取り、「これも、撮影に使ったんですよね」と思い出を語りながら、終始和やかな雰囲気。

 店を出て、甘酒横丁周辺の路地をしばらく散策してみた。下町の情緒あふれる街並みに、自然と溶け込むように歩いていく阿部さん。

阿部「撮影中は毎日、この周辺に通っていましたからね」

 そう話すだけあり、近くにある老舗の玉子焼きの美味しさや、撮影でお世話になったラーメン店などの話も飛び出した。

阿部「普段はあまり外で買って食べるということは多くないのですが、撮影中は商店街のいろいろな店で買ったり食べたりしましたよ。この辺は、本当に美味しい店が多いんですよね」

 近隣のグルメ情報にも、ずいぶんと詳しくなったようだ。

 次に、喫茶店「黒茶屋」として撮影された日本橋小伝馬町にある「カフェ紅」に向かう。加賀刑事の大学の後輩で、雑誌記者の青山亜美役の黒木メイサさんがアルバイトをしている設定の店だ。

「カフェ紅もみ」で「ここのスイーツは美味しいですよ」とロールケーキを味わう

 古民家を改装したという店内は、懐かしい昭和の雰囲気が漂い、縁側のある中庭も見えてしっくりと寛げる空間。靴を脱ぎ、畳の和室でホッと落ち着く。

阿部「ここのスイーツは何でも美味しいですよ」

担当編集Y「甘いものはお好きなんですか?」

阿部「好きですね」

 そう話しながら、この店の定番人気である季節のロールケーキを美味しそうに頬張った。

阿部「うん、旨い」

 クールでかっこいい大人の印象でありながら、スイーツを食べる茶目っ気たっぷりの少年のような姿も魅力的だ。そんな阿部さんに、今回の「麒麟の翼」の映画について、また、「新参者」に続いて物語の舞台となった日本橋・人形町の魅力について、改めてインタビューした。

――今回の映画に登場する日本橋の麒麟の像について、撮影前に何か印象は持たれていましたか?

阿部「車などで前を通るときに見掛けたことはあったので、そこにあることは知っていました。でも、じっくりと見ることができたのは実は今回の撮影が初めてだったんです。麒麟の像が翼を持ちながらそこに存在していることの意味合いや、その上に高速道路が通っていて、せっかくの麒麟が羽ばたけないということも、原作や撮影を通じて知ることができました」

――人形町の街にはどんなイメージを持ちましたか?

阿部「撮影をするまではそれほど詳しくありませんでした。東京の下町でありながら、ビジネスマンや学生、それに近所の買い物客など、いろいろな人が歩いていて、これだけさまざまな人々が行き来する街というのは珍しいんじゃないかな。撮影中もいろいろと街の勉強をさせていただきました」

――印象に残った食べものやお店は?

阿部「本当に、どのお店も食べものが美味しいんですよね。昔ながらのものと現代のものが融合している街なので。たとえば玉子焼きひとつでも、有名なお店が何軒かありますからね」

――それがこの街の魅力ですよね。

阿部「そうですね。昔の江戸を感じさせるような店も多いし、伝統ある店もありますし。下町の人情が今もしっかりと生きている街です」

――今回の映画やドラマ「新参者」では、人形町の方々がかなり協力的だったとお聞きしました。

阿部「そうなんです。皆さんとても温かくて親切で、本当に撮影しやすかったので、最後は一緒に打ち上げをしたんですよ。実は『新参者』のドラマを3ヵ月やらせていただくことになったとき、商店街の皆さんが集まって打ち合わせをしてくださったらしいんです。なるべく撮影の進行を邪魔しないように、協力して支えていこうと決めてくださったみたいで……。撮影中は、いつも差し入れなどをしていただいて、街を挙げて応援してくださいました。感謝しています。今では僕にとって、ここが第2の故郷だと思っています」

――加賀は抜群の洞察力で事件のトリックを暴き、さらにその裏に隠された人間の心理をも解き明かす名刑事。そのイメージ通りと絶大な支持を得る阿部さんですが、独特の鋭い目線など、役づくりで工夫している部分はありますか?

阿部「原作を読んでみると、加賀はひょうひょうとしているんですが、結構ミステリアスな部分を持っている刑事。そういう人物像の表現は分かりづらいんです。事件解決のときに加賀がセリフをしゃべる場面はそんなに多くはないので、あまり動かないような演技でイメージしようと思いました。目のちょっとした動きなどで、視聴者が想像できるような感じがいいんじゃないかなと捉えて意識していました」

――競演している溝端淳平さんは、捜査一課刑事で加賀のいとこの松宮脩平役を演じています。

阿部「松宮は加賀の捜査とは違う動き、気付かない部分、足を運ばないようなところまで行って情報を拾ってくる面を持つ若い刑事。加賀とのコンビネーションで事件解決に導いていきます。実際に、溝端君は僕にない部分をいっぱい持っている役者。よくしゃべるし(笑)、撮影中も彼は情報をいろいろと教えてくれました。たとえば自分たちの年代で何が流行っているのかとか、どんな考え方をしているか、なども話したり。そういう意味では、それぞれ違う面を持つ加賀と松宮の関係性と、どこか似ているかもしれませんね」

――映画「麒麟の翼」の見どころを教えてください。

阿部「今回は昨年の新春スペシャルドラマ『赤い指』に続いて、加賀と彼の父親との確執、知らなかった父親像も出てきます。そのことと、事件に関わる家族の関係から加賀がヒントを得て謎を解決していくことになるわけで、あらためて〝家族〟や大切な人への思いを感じていただける作品です。

 たくさんの刑事ものが映画化されていますが、加賀シリーズは独特。トリックを解き明かすミステリーの重厚な作品でもあり、感動的な人間の物語にもなっています。加賀は、事件の被害者も加害者も、その人の心の内面まで深く入っていき、さらに事件にかかわっているすべての人の心を救っていく刑事です。世代を超えて楽しめるその面白さを、映画サイズで楽しんでほしいですね」

【ストーリー】
  東京・日本橋、翼のある麒麟像の下で男性の他殺体が発見された。刑事・加賀恭一郎(阿部寛)は、被害者・青柳武明(中井貴一)の死の直前の行動に疑問を抱く。なぜ彼は腹部を刺されたまま助けを求めず、8分間も歩き続けたのか? そもそも縁もゆかりもない日本橋で何をしていたのか?

 容疑者は八島冬樹(三浦貴大)。八島は青柳のバックを持って現場から逃走中に、車にひかれて意識不明になっていた。恋人の中原香織(新垣結衣)は彼の無実を訴えるが、警察本部は生活に困窮する八島が金品欲しさから犯行に及んだものとして、裏付け捜査を開始した。

 一方、独自に捜査を続けていた加賀刑事は、推理の限界にぶつかっていた。被害者はなぜ殺されたのか。そして命が終わる瞬間に、誰に何を伝えようとしていたのか。事件に関わるのは日常を生きる普通の人々。ボタンを掛け違えば、それは自分だったかもしれない。すれ違う心が起こした哀しき殺人事件。加賀恭一郎は、その背後に隠された真実を見つけ出すことができるのか?

 映画「麒麟の翼」の試写会を鑑賞したライター肥田木奈々と編集Yさん。

 ライター肥田木(以下肥)「原作を読んで、どんな映像になるのかとワクワクしていましたが、期待以上の面白さでした」

編集Y(以下Y)「あの日本橋が舞台という殺人事件のミステリアスな展開と、登場する家族や恋人たちの人間模様が細やかに表現されていて、グイグイとスクリーンの中に引き込まれていきましたね」

肥「阿部さん演じる加賀刑事が事件のトリックを暴く過程が面白かった。捜査のときの独特の眼力で見つめられたら、私なら何でも白状しちゃうかも」

Y「ホント、人間の心の奥底も探る阿部さんの迫真の演技はすごかったですね。僕は被害者の青柳武明役を演じる中井貴一さんが死の間際に伝えたかった謎が解き明かされたとき、涙がボロボロとこぼれてしまいました」

肥「今回の映画はある意味〝家族〟がテーマになっていますものね。昨年の大震災で『絆』が見直されている今、大切なメッセージがある気がします」

Y「映画の舞台となった日本橋・人形町の下町の街並みが登場するのも楽しかったですよね。加賀と松宮コンビの掛け合いなど笑えるところもあって面白かったです」

肥「私も日本橋・人形町に改めて行ってみたいと思いました。既にロケ地を巡っているファンもいるそうですよ」

⇒本を購入する(AMAZON)
⇒本を購入する(楽天)

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら