完全保存版 腕もいいが、気持ちもいい
この医者でダメだったら諦めよう
あなたを待っている88人の名医

週刊現代 プロフィール

「医師は魔法の手を持っているわけではない」(前出・須磨医師)のだ。

 聖路加国際病院の川副医師も、こう言う。

「全国から集まってくる重い患者さんの中には、『先生に診てもらえたら結果は問いません』という方もいるのです。だから精密に診ます。ただ、勝ち目があると思って執刀しても、結果的にダメなこともある。だけど逃げるようなことはしません。打つ手がなくてほったらかしになっていた患者さんでも、私から見て勝算があると思えばやる。難易度の高い患者さんだから、100人手術をすれば5人は亡くなるかもしれない。その結果に対しては、もう、医師として頭を下げるしかありません」

 誰も手を尽くさなければ命が尽きるのは目に見えている。そんな状況の患者を前にして、自分の手で助けられる可能性が見出せるのであれば、失敗を恐れず立ち向かう---これも名医の条件のひとつなのだろう。

患者の希望を叶える

国立病院機構東京医療センターの萬医師

 ただし、あえて「治療しない」という選択もある。それを教えてくれたのが、国立病院機構東京医療センター・放射線科医長の萬篤憲医師だ。患者への負担や後遺症が少ない前立腺がんへの「小線源治療法」を国内で最初に成功させたのが東京医療センターで、萬医師はその主要メンバーだ。それ以前から、放射線治療によるがん患者の緩和ケアにも力を入れている。

 その萬医師が担当した30代の子宮頸がん患者がいた。がんが進行し、全身に転移していた。

「その患者さんが、『どうせ治らないのなら抗がん剤は使わないでほしい。子どもが小さいですし、髪の毛が抜けた姿で学校行事に参加したくありませんから。残りの時間を、できるだけ今までどおり、普通に暮らしたい』とおっしゃったのです。私たちは、定期検査だけは続けて、どこかでもう一度抗がん剤を勧めようとも考えました。でも、患者さんは『検査もしなくていいです。大切なことは、できるだけ自分らしく生きることですから』と。微笑みながら、穏やかに私たちにも接してくれていました」

 がんはさらに進行して、体重は10kg、20kgと落ち、最後には歩行が困難になって車椅子になった。

「結局、私のところにきて1年ほどで亡くなりました。ご家族は、もっと積極的に治療をしてほしかったのだと思います。ただ、私は患者さん本人の意志を尊重した。患者さんに寄り添って、『それは間違っていることではないと思いますよ。抗がん剤で治るがんではありません』と言いましたから。ご家族の思いはまた別なのでしょうが、ご本人は間違いなく100%満足していたはずです。とても立派な生き方だったと思います」