ベン・ジョンソンはいまも怒っていた
あの人はいま オリンピック選手篇

カール・ルイス セルゲイ・ブブカ 大古誠司 宗兄弟 森下広一 塚田真希ほか
週刊現代 プロフィール

世界の陸上関係者の中には私を気の毒に思う人もいたが、私はとことん闘うことはしなかった。本来、私は消極的で闘いを好まない性格だからね。

だが、あの悪夢のような一日を忘れたことはない。あの日から、私の人生は180度変わってしまった。みんながよってたかってベン・ジョンソンの人生を破壊したんだ」

当時を思い出し、怒りに震えるベン・ジョンソンに「もしいま、誰か一人だけ殴っていいと言われたら誰を殴りたいか」と問いかけた時、彼は冒頭のように答えて、続けた。

「カール・ルイスだ。彼は私と同じこと(ドーピング)をやったはずなのに、私とは正反対の道を行った」

現在ベンは、地元トロントで若い選手のコーチをして暮らす。リビアのカダフィ大佐の息子やマラドーナなど、他所で受け入れられない「問題児」のコーチも引き受けてきた。
一方のカール・ルイスは'92年バルセロナ、'96年アトランタでも走り幅跳びで金メダルを獲得、英雄のまま現役を引退する。

歌手としてシングル3作を発表するかたわら、「カール・ルイス基金」を設立して慈善事業に勤しみ、国連の親善大使も務めた。近年では政界進出にも意欲を見せている。ベンと同じ50歳になったルイスは言う。

「慈善事業を通して、他人のために尽くす素晴らしさを知り、州の上院議員に立候補したいと思うようになりました。若者が人生の夢を達成できるように、社会を刺激することが私の役目であり、使命です」

ベン・ジョンソンがカール・ルイスを恨むのは筋違いかもしれない。しかし、それも仕方がないと思えるほど、二人の「あれからの24年」はクッキリと明暗が分かれている。

ルイスの例を引くまでもなく、オリンピックでの栄光は、その後の人生の充実につながるケースが多い。

日本でも「鳥人」の呼び名で人気が高かった棒高跳びのセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)は、48歳になったいまはIOC(国際オリンピック委員会)理事、ウクライナオリンピック委員会会長を務めている。

ブブカが本誌に語る。

「私が引退後もスポーツ界に残ったのは、私にはオリンピック選手がさらに前進することを助けるのに、十分な知識と経験があるからだ。選手時代も目標を達成すると次の高さに挑戦したが、同じようにいまも新しい目的をどんどん達成していきたい」

プライベートも順調だ。