森福允彦 福岡ソフトバンクホークス「森福の11球」

フライデー
日本シリーズ第4戦で力投する森福。通算5試合に投げて、被安打1、無四球、無失点と完璧なピッチング

 周知のとおり、当シリーズは敵地・福岡で中日が連勝した後、逆に名古屋でソフトバンクが3連勝。一気の巻き返しで逆転日本一を勝ち取ったのだが、勝負の分かれ目は第4戦にあった。

 2‐1とソフトバンクの1点リードで迎えた6回裏。やはりノーアウト満塁の絶体絶命のこの場面で、江夏と同じサウスポーのリリーフが奇跡の投球でチームを救った。負ければ中日の王手となったこのピンチを、わずか11球で切り抜けた森福允彦(25)である。

ダイヤモンドに入る前、帽子をとって目をつむり、好投を祈るのがルーティン。写真は「11球」の直前のもの

「正直、実感はないんです。『森福の11球』と江夏さんの21球になぞらえて言ってもらえるのは嬉しいですけど、実際にあの試合を見たわけではないので」

 遠慮がちに背中を丸めて話すと、小柄な身体がより小さく見える。球団プロフィールによれば身長は171cm、体重は65kg。

「最近は街で声をかけられることも多くなりましたけど、遠めだと気づかれないですね(笑)」

 そんな小兵ではあるが、ホークスには欠かすことのできない、中継ぎの柱である。シーズンではチーム最多の60試合に登板。それだけ投げていながら、年間の失点はわずかに7(防御率1・13)。

 本誌は日本シリーズ第4戦のVTRを用意。あの瞬間、あの一球に込められた意味を本人に解説してもらった。

 ホークスのチームメイト、さらには対戦相手となった中日の3人のバッターの証言も交え、日本シリーズ史に刻まれた新たな伝説を徹底検証する。

予感していた登板

 まずは「森福の11球」までの経緯をおさらいしよう。先にも述べたとおり、ホークスはこの試合を迎えるまで1勝2敗と劣勢。負ければ王手をかけられる厳しい状況だった。そんな中、ホークスは初回に敵失をからめて2点を先制。

 押せ押せムードのベンチの中でしかし、冴えない表情の男がいた。正捕手・細川亨(31)である。