数々の名作を遺して、名脚本家70年の生涯に幕---
「市川先生に初めてお会いしたのは『セブン』が終了した翌年の夏でした。先生は、湘南海岸で行われた日焼けコンテストに妹さんと一緒に来られたんです。私に会うなり妹さんが『お兄ちゃん、やっとアンヌ隊員に会えたよ! よかったねぇ』と言ったんです。先生は、その隣で照れ臭そうにしていらっしゃいました」
故人との思い出をそう語るのは『ウルトラセブン』でヒロインの友里アンヌ役を演じた女優のひし美ゆり子氏(64)だ。
円谷プロの特撮シリーズや『黄金の日日』などのNHK大河ドラマ、刑事劇の名作『太陽にほえろ!』などを手がけた脚本家の市川森一さんが、12月10日未明、肺がんのため70年の生涯を終えた。
市川さんは11月3日に旭日小綬章を受章したばかり。同受章発表に向けた報道陣用の事前取材が予定されていた10月27日に急な発熱で入院していた。検査の結果、左胸にがんが見つかり、そのまま都内の大学病院に転院。同授章式と11月11日にNHKで行われた自身の長編小説が原作のドラマ『蝶々さん』の制作発表には、病院から抜け出し参加していた。
NHKエンタープライズの清水一彦エグゼクティブ・ディレクターが語る。
「『蝶々さん』はオペラ作品の『蝶々夫人』をモチーフに書かれた時代小説です。市川さんは会見で、『こういう作品が生涯の遺作になれば幸運だなと思ったりしました』と話していました。まさに言葉通りになってしまい、残念です・・・」