2011.11.30(Wed)

シリーズ 2020年の世界から見た2011年の日本2
~「食の砂漠」問題にいかに対応すべきか?~

筆者プロフィール&コラム概要

 国も経済産業省が2009年末から、大手流通業者(イオン、セブン-イレブン・ジャパン、ヤマト運輸など)をオブザーバーに含めた「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」を開催し、民間と共に具体的な対策を協議・検討し、民間流通業に対しても、「地域生活インフラを支える新しいビジネスの開拓(インターネット通販など)」に取り組むことを明確に求めている。ただ問題なのは、民間事業として、どこまで採算性がとれるビジネスが可能なのか、ということである。

顕在化しつつある「SS過疎地」問題

 国内の生活インフラに関して既に顕在化している問題をもうひとつ紹介したい。近隣にガソリンスタンド(以下、SS)が無くなってしまう「SS過疎地」問題 である *4 。自動車社会である地域においてSSは自動車の給油のライフラインであると同時に、農機や給湯・風呂炊き、冬のストーブに利用する灯油確保のためのインフラでもある。

 全国石油協会によると、「SS過疎地」の定義である、「市町村内のSS数が三箇所以下で、今後さらに減少すると地域住民への石油製品供給が極めて問題となる地域」は全国に200箇所以上ある。既に、最寄りの給油地が自宅から20km以上離れている地域も存在する。

 SS経営は国内では2004年にガソリン需要が減少に転じてから全国的に苦しい状況である。特に、過疎地では人口減少等により燃料油需要は減少したものの、価格は大量販売をしている都市部の低い水準が適用されてしまうため、売上は伸びず、結果として、多くの事業者が赤字経営化に陥っている。都市部のSSは、給油以外のサービスで収益を上げることも模索しているが、域内人口の少ない地域のSSではそれも難しい。

 そのため、国・全国石油協会では、過疎地域のSSは地域内への石油製品の安定供給確保を目標とし、消費者・SS事業者・業務連携先となる自治体や他業者が一体となって、地域ごとの戦略(="地域マスタープラン")を立てるべきと指針を出している。

 即ち、事業者であるSSは、石油製品の流通における効率化などビジネス的な側面での努力のみならず、地域のまちづくりや活性化活動への積極的な参加や、他業者との連携による新しい経営形態の模索についても努力することが求められている。本来は事業主である民間企業が、公的な役割を担っているのである。

2020年には地方の「生活インフラ」はさらに弱体化

 2020年には、過疎化、高齢化がますます進行する。既に表面化している「買い物弱者」や「SS過疎地」といった問題以外にも、生活インフラに関連した様々な問題が露呈する可能性が高い。

 特に、電気・ガス・水道・通信・放送・郵便等の分野では、人口が少なく経済基盤が小さい過疎地域における事業展開は、設備投資に対する十分なリターンが得られないため、大きな利益圧迫要素になりかねない。

 通信のような一部のサービスではユニバーサルサービスファンドを設けて、ユニバーサルサービスを維持しようとしているが、このファンドの原資はユーザー料金から捻出されており、ユニバーサルサービスの範囲を拡大していくには広くあまねく国民の理解を得る必要がある。ユニバーサルサービスを強化するよりも、むしろ、住民の都市部への移住を促していく政策をとるべきである、という声が強まるだろうし、また政策メニューも具体化していくべきだろう。

 では民間企業にとっては「食の砂漠」問題や「買い物弱者」問題は事業機会となるのだろうか。右肩上がりの経済成長が止まり、国内市場のホワイトスペースが消失した現在、企業はグローバル化を推進すべく、海外で様々な投資を行い、未知なるフィールドで事業拡大を模索している。しかし、成長が停滞した国内市場においても、新たな事業展開を行っていく可能性はある。

*4 「平成21年度SS過疎地調査事業(総合調査事業)報告書」(全国石油協会)
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