落合博満「今明かされる『オレ流采配』の真実」
「完全試合直前」山井の交代、アライバ謎のコンバート、WBCボイコット・・・

フライデー

〈監督を務めて8年間、私が先発投手を決めたのは一度しかない。就任直後の2004年、開幕戦に川崎憲次郎を先発させた試合だ。つまり、私が監督になってからの2試合目からはすべて、森繁和ヘッドコーチが決めていた〉

 誰が先発か知らない日もあった。

〈顔は怖いし、言葉遣いが少々乱暴に聞こえることもあるが、選手に対して並々ならぬ愛情を持っているのがよくわかる男だ〉

 とは彼の森コーチ評だ。一度、実力を認めたら、責任持って100%任せ切る。この胆力と信頼が部下を育てるのだ。

■采配(2) 勝つことが最優先

  '07 年の日本シリーズ第5戦。先発の山井大介(33)は8回まで日本ハム打線をノーヒットに抑えていた。完全試合達成となれば日本シリーズ史上初の快挙だったが、落合監督が9回のマウンドに送ったのは守護神・岩瀬仁紀(37)だった。

〈この日本シリーズの流れを冷静に見ていった時、もしこの試合に負けるようなことがあれば、札幌に戻った2試合も落としてしまう可能性が大きいと感じていた〉〈私はドラゴンズの監督である。そこで最優先しなければならないのは、「53年ぶりの日本一」という重い扉を開くための最善の策だった〉

 ここで降板させたら、何と言われるか。だが、点差はわずかに1点。山井は右手薬指のマメを潰している―邪念を振り払い、選択したのが岩瀬の投入だった。

〈私の采配を支持した人には日本シリーズを制した監督が多いな、ということ以外、メディアや世間の反応については、どんな感想を抱くこともなかった。(中略)采配の是非は、それがもたらした結果とともに、歴史が評価してくれるのではないか〉

 周囲に惑わされず、勝利のために最善を尽くす。リーダーはブレてはいけないのだ。

■采配(3) 「アライバ」シャッフル

 落合采配・最大のミステリーとしてファンの間で語られているのが、セカンド・荒木雅博(34)&ショート・井端弘和(36)の「アライバコンビ」のシャッフルだろう。6年連続でゴールデングラブ賞を獲った二人の守備位置を、 '10 年シーズンから落合監督は入れ替えたのだ。

〈彼らの適性だと判断した〉〈〝慣れによる停滞〟を取り除かなければいけない〉
というのがその理由。この年、荒木は自己最多の20失策を記録。井端は体調不良もあり、リタイア。コンバートは失敗に見えた。だが、指揮官はへこたれない。