統合知が求められる、4次元のコミュニケーション空間とは。

第一回
 現代ビジネスの執筆陣に、新しい筆者が加わった。
マーケティング・プランナーの山田まさる氏だ。ユニークな発想と構造的思考をもって、モノの売れない時代のマーケティングの地平を切り開いている、気鋭のプランナーである。
山田氏は、マーケティングPRの専門会社の代表を経て、2007年5月に設立した日本初の本格的なIMC(統合マーケティングコミュニケーション)プランニング・ブティック「インテグレート」のCOOに就任。「キシリトール」を2000億円市場に育てた代表の藤田康人氏とタッグを組んで、日本のマーケティングに新風を吹き込んでいる。創業5年目ながらインテグレートは、日本の名だたる企業をサポートし、食品・飲料から家電、自動車まで幅広い領域で次々とヒット商品を飛ばしている。
2009年に著した『脱広告・超PR』(ダイヤモンド社刊)では、広告の効かない時代の新しい情報伝播の仕組みづくりを提唱。世の広告マンを震撼させた同書は、逆風のなかでマーケティングに日々頭を悩ませている事業会社のマーケッターたちの絶大な支持を獲得した。
同書の刊行から2年。マーケティングの先端の現場で、「考え、実践し、検証する」を積み重ねてきたプランナーの視点で、激変するメディア環境の読み解き方とコミュニケーションの未来を展望する新連載がスタートする。

 僕の仕事は、企業のマーケティング戦略を「コミュニケーション」から支援することです。もう20年近く、マス・マーケティングの世界で、特にPRを使って多くの企業の問題解決のお手伝いをしてきました。

 このコラムのテーマは「いまどきのコミュニケーションのつくり方」です。

 「いまどき」とは、ソーシャル・メディアまでを含めた複層のメディア空間、という意味です。もちろん、「マス否定」、「ネット礼讃」などという単純な話ではありません。

 僕がいま考えているコミュニケーション空間の全体像を図にしてみました。名づけて「山田まさるのコミュニケーション大図鑑」。

 まず、図を説明していきましょう。図は4次元から構成されています。

 一番下、人物が立っているのは1次元。実生活のコミュニケーション空間【グラウンド(地べた)】です。2次元は図の一番上、マス・コミニケーションの空間【クラウド(雲の上)】です。3次元目は、1次元と2次元にまたがる【スペース(宇宙)】、つまりインターネットの空間です。そして最後の4次元目が、インターネットの空間上に新たに出現した、コミュニケーション空間、【ソーシャル(社会)】です。

僕は、1次元から4次元までのそれぞれの次元ごとに、コミュニケーションの座標(テーマやモノの見方)は変わってくる、と考えています。

1次元~3次元におけるコミュニケーションの座標

 1次元【グラウンド(地べた)】は、等身大の自分の生活や人生がテーマとなります。私事(ワタクシゴト)がコミュニケーションの座標となります。

 2次元【クラウド(雲の上)】はその名の通り、雲の上の話、つまり、世界情勢や日本の諸問題、事件や事故がテーマです。世の中事(ヨノナカゴト)が座標です。

 では、3つの目の空間、【スペース(宇宙)】の座標は何でしょうか。インターネット空間の中には、私事から世の中事まで、あらゆるものが混在している状態です。ここでのコミュニケーションの座標は、時間や空間の制限を超えたもう1つの地球と言えるのではないでしょうか。

 ところで、インターネットは人と人とのつながり方(=コミュニケーション)を大きく変えました。その結果、既成の世界の在り方、枠組みが次々に揺らぎ、壊れていきました。4次元の座標の話をする前に、その様子を改めて振り返ってみましょう。

 僕らは電子メールで、いつでもどこでも、気軽に世界中の人々と連絡を取り合うことができるようになりました。検索エンジンを使って、世界中の情報にアクセスすることもできるようになりました。誰もが情報発信をできるブログというミニ・メディアが生まれました。この究極のミニコミは個の発信機能を拡大させました。

 そして、これまで雲の上から降ってくる世の中の情報を「受信」するしかなかった一般市民が、世界に向けて情報を「発信」するようになりました。その一方で、毎日の営業メールやスパムメールが大量に流通していたりもします。1次元(グラウンド)での個人の「情報発信」「情報検索」機能は大きく拡張しました。

 ネットは2次元のマス・コミニケーションの世界ともつながっています。ヤフーの“トピックス”のリソースの多くが新聞報道であるように、テレビや新聞で取り上げられる「世の中事」がネット上で話題になっています。マスコミのもつ議題設定機能(アジェンダ・セティング)はネット空間にも大きく影響を及ぼしています。情報の連鎖と反響、というかたちでマス空間とネット空間は繋がり、膨張しました。

 ネット空間は、ミニ・メディアからマスメディアまでを抱え込んで「発信過多」の状態です。溢れる情報の中で、人は上から情報を鵜呑みにするのではなく、情報を精査し、不要な情報はシャットアウトするようになりました。

 人々が憶えることをやめても、いつでも検索して情報を引っ張り出すことができるようになりました(このことがマスメディアのビジネスの枠組みを揺らしています。)

 さらに、インターネットは、モノやサービスの流通、販売の枠組みを大きく変化させました。店を構え、在庫を抱えるという空間的な制限が大幅に低減しました。人件費もかさみませんし、ユーザー間では「口コミ」「評判」がネット上で生成されて、おすすめ情報として商品やサービスの選択に役立っています。

 この10数年間、僕らはコミュニケーションの変化が世界の在り方を変えていく様子を目の当たりにしてきました。まるで長編のドキュメンタリー映画を見るように。

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