夫に早く死んでほしい妻たち

「あなたの存在自体がストレスなのよ!」
週刊現代 プロフィール

「その年齢の夫婦の妻が夫に持つ『死んでほしい』という気持ちは、経済的な面からの『死んでほしい』でも、いなくなればいいのにという望みでもなく、心の底から本気で『死んでほしい』と望んでいるケースが非常に多いですね。あなたが死んでくれたら、どれだけ私は自由になるか、と切に願っての『死んでほしい』なのです」(岡野氏)

 この世代の妻は、夫から「女はなにも文句を言うな」という観念を植え付けられて生活をともにしてきたというケースが多いため、結婚して以来、夫に対する不満を心の奥底に封印してきた。それが溜まりに溜まって、爆発する瞬間が最も恐ろしいのだという。

「熟年世代の『死んでほしい』は、吐き出されたら最後、ほとんど解決のしようがないのです」(岡野氏)

夫は気づいていない

 夫に死んでほしいと思う妻は、若い世代の女性の話で、われわれには関係ない―。そんな甘い考えを持っている熟年男性は、冒頭の男性のように、ある日突然、妻のひと言で奈落の底に突き落とされることになるかもしれない。

 実際、冒頭の男性のケースは特殊なものではない。シニアが抱える問題について研究・支援する、財団法人シニアルネサンス財団には、ここ数年、離婚問題や家族問題について、60代前後の男性から寄せられる相談が急増しているという。

「以前は女性からの相談が圧倒的でしたが、恥も外聞も捨てて相談に来られる、切羽詰まった夫婦間の悩みを抱えた男性が増えています」(同財団事務局長・河合和(やまと)氏)

 河合氏によると、熟年の場合、長年のコミュニケーション不足から『3つのK』という問題が発生し、それが原因で夫婦間の危機を招くことが多いという。

「3つのKとは経済問題、健康問題、そして心の問題です。経済問題は、『オレが働いて稼いだカネなんだから、その使い道はオレに従え』という夫の身勝手な考え、健康問題は退職後の夫の健康悪化が進むこと、心の問題は、会社で人間関係を上下で考えてきた夫が妻を見下すことで、この3つから生じるストレスが重なることにより、妻の怒りが爆発して、『死んでほしい』という気持ちが生まれるのです」

 退職後、急に独りになってしまった夫が、「定年後は妻孝行をしてあげよう」と思っても、自分のコミュニティを確立している妻にすれば、いまさら夫にベタベタされたいとは思っておらず、ありがた迷惑。

 さらに妻孝行の気持ちの裏には、自分が年々衰えていくなかで、妻に面倒を見てもらわなければならない、という後ろめたさが隠れていることを妻は見抜いているので、夫の振る舞いの一つ一つが疎ましく思えてきて、「死んでほしい」につながるのだ。

 また、熟年女性の場合、潜在的な防衛本能が働いて「夫に死んでほしい」と思うようになるのではないか、という見方もある。

 愛媛県総合保健協会の藤本弘一郎氏の研究報告によると、75~84歳の男女を調査したところ、男性の場合は配偶者がいないほうが死亡リスクが高くなるのに対して、女性は配偶者がいるほうが、死亡リスクが高くなるという結果が示されている。

 さらに黒川内科院長(黒川心理研究所所長)の黒川順夫(のぶお)氏によると、定年後、夫が自宅にいることがストレスとなって、さまざまな病的症状を発症してしまう妻が数多くいるという。