「食べ物に好き嫌いはないっスね。出されたモノは全部食べます(笑)。こないだ焼き肉食べ放題の店に行って肉を38人前、サンチュ8人前を完食しました。ごはんはいつもドンブリ5杯食べます!」
身長180cm体重95kgの巨漢が、喜色満面で本誌記者に語りかける。その姿はまさにドラフト史上〝最大の〟隠し玉に相応しいものだった---。
まさかのサプライズ指名だった。10月27日に行われたプロ野球ドラフト会議で、早稲田大学ソフトボール部に所属する大嶋匠(21)が北海道日本ハムから7位指名を受けたのだ。硬式野球の公式試合に出場したことのない選手のプロ入りといえば、'68年に同じく早大の競走部に所属していた短距離ランナーの飯島秀雄(67)が東京オリオンズ(現ロッテ)からドラフト9位指名されたぐらい。だが、飯島があくまで代走要員として評価されたに過ぎないのに対し、大嶋は野手としての活躍を見込まれ指名を受けたのだ。
群馬県生まれの彼は小学校までは軟式野球をプレーしていたが、進学した新島学園中等部に野球部がなかったため、ソフト部に入部する。高等部に進学すると高校総体や国体で優勝。早大スポーツ科学部に進学後の'08年にはU-19日本代表の4番を務め、'10年のU-23ワールドシリーズでは優秀選手賞を受賞した。今季の大学リーグ戦では、13試合連続ホームランという大記録も達成している。
その非凡な能力を、早大ソフト部の吉村正総監督(65)が証言する。
「彼のソフトでの遠投は93m。これは硬式野球で換算すると、120mの超強肩です。また、打撃では90m超のホームランを量産しますが、これも硬球でいうと120mクラス。これはプロ野球で活躍できる人材だと思い、ツテを頼って王貞治さん(71・現ソフトバンク会長)を育てた荒川博さん(81・元巨人打撃コーチ)のところに行かせたんです。2年前から指導を受けていますが、柔らかみのある打撃は荒川さんのお墨付きです」