
「お前らになんか、首相との話し合いの中身を言えるわけねーじゃねーか」
10月初旬のある日、不良のような悪態が首相官邸の廊下に響き渡った。野田佳彦首相(54)との第三次補正予算の打ち合わせを終えた安住淳財務相(49)は、話の中身を聞こうとぶら下がる記者たちに、冒頭のように言い放ったのだ。余りに横柄な物言いに、官邸の警備員もア然とした表情で財務相を凝視していた。その場に居合わせた財務省詰記者が憤る。
「安住は歴代の中でも最低の大臣ですよ。権力を手に入れて増長したのか、チンピラのような物言いで勘違いも甚だしい」
財務相担当記者たちに対し、「お前らがチョロチョロするから忙しい」と暴言を吐き、野党議員ばかりか、年上の官僚を摑まえて〝あいつら〟呼ばわりする。
こんな彼のゴーマンな精神性は、いったいどのように育まれたのだろうか。
コンプレックス
上の写真を見て欲しい。ガチガチに固めた髪をテカらせ、詰め襟の学ラン姿でお猪口を口に運ぶ学生。政治家センセイの過去にしては、さすがにヤンチャが過ぎるカットだが、これは、宮城県立石巻高校の卒業アルバムに収められた、安住氏の若かりし日の写真である。

〝ワルぶっていた〟高校時代、安住氏は、応援団の副団長を務めていた。当時の彼を知る同級生はこう語る。
「安住は、小柄だったけど運動神経が良く、誰とでも話ができてクラスの中では目立ってましたよ。東北大に進学して、歯科医になったお兄さんがいるんです。そのお兄さんの成績と比べると見劣りしますが、そこそこ勉強もできていました。その一方、勉強だけでなく、麻雀もそれほど上手くなかったですがやってましたね」

そして、右の写真をご覧頂ければお分かりのとおり、体育祭では、小柄な体格を活かし、騎馬戦では上に乗っかって大活躍していた。
安住氏は、一浪の末、当時は夜間学部であった早稲田大学社会科学部に進学。卒業後はNHKに入局し、秋田放送局勤務などを経て、東京の政治部記者となると、彼の態度は尊大さを増していった。あるメガバンクの幹部は、安住氏の人柄を、各紙の記者に取材したという。
「我々バンカーが財務相の性格を知ることは、リスクマネジメントに繋がるため聞いたんですが、評判は良くなかった(笑)。一つぐらい良い話が出るかと思ったら、『欠席裁判をしたくないから聞かないで』と苦笑いしていました。NHK記者時代の話で印象的だったのは、自分がサボっていたばかりに政治家の話を聞けず、その時の取材メモを他社の記者に見せてもらえず逆ギレした話です」
その際、周囲の記者に「オレが政治家になったら、お前たちには絶対話さない!」とも発言していたという。安住氏の父・重彦氏は、宮城県牡鹿町(現石巻市)の元町長である。安住氏には、若い頃から二世議員になるという野望があったのだ。
そんな彼の本性は、園田博之官房副長官(当時)の娘にも見抜かれていた。安住氏は、園田氏の番記者を務めていたが、
「安住が初当選したと聞いた時、園田氏のお嬢さんは『あの安住? へ~、あの安住がね~』と苦笑していた。園田氏には腰が低く、秘書には強く出る安住を見ていたからでしょう」(全国紙政治部幹部)
パートナー選びでも、彼は強い上昇志向を見せつけた。大学時代に所属していた、早稲田大学雄弁会の大先輩、小渕恵三元首相(故人)の次女、小渕優子代議士(37)を結婚相手として狙っていたというのだ。全国紙政治部の記者が、こう語る。
「記者時代の安住は、雄弁会の繋がりもあって、かなり小渕さんに食い込んでいました。当時は『小渕さんの娘と一緒になる』とうそぶいていましたが、相手にされず、実現しなかった。168㎝と長身の優子さんと身長差のあるカップル誕生かと期待したのですが(笑)。でも、彼の脳内では、小渕家の一員となって、自民党から出馬するという計画だったようです」
この件を、小渕事務所に40年近く勤める政策秘書の加辺守喜氏は、「私が知る限り聞いたことはない」と一笑に付した。
地位を得て有頂天の安住氏を、財務省は上手く操っている。ある財務官僚は、
「安住さんは、財政のことをまったく知りません。彼の答弁は、我々の作文を棒読みするだけですし、我々の言うことをよく聞いてくれてますよ。財務官僚の仕事は、安住さんが高級料亭でラーメンを食べてもおかしくないほど、お馴染みさん扱いされる段取りをすることなんです」

と、彼の無知を揶揄する。しかし、その財務官僚も、安住氏の手綱を締めるのには苦労をしているようだ。
「実は、安住が冒頭の暴言を吐いた際に、真砂靖主計局長が同行していたのです。安住は、国会での予算審議の場で野党からの質問にすぐカッとなるので、彼をイライラさせるなと、勝栄二郎事務次官から、財務官僚たちにお達しがあったらしいんです。その後、事務次官が主計局長に対し『君がついていながら・・・・・・』と、説教したと聞きました」(財務省詰記者)
ギリシャのデフォルトが叫ばれ、円高が止まらない混乱期に、財政を司る大臣と官僚がこれで、日本は大丈夫なのか?
「フライデー」2011年11月11日号より