10月31日10時25分ころ、日本の政府・日銀は、突然、大規模なドル買い・円売り介入を開始した。その規模は7兆5千億円から8兆円近いといわれている。介入に使われた資金額は過去最大だ。それだけのドル売りが一斉に出ると、為替市場に大きなインパクトを与える。
それまで1ドル=75円台で推移していた円・ドル相場は、介入によって大きく反転し、一時、79円台まで円安方向に振れた。その背景には、円高がさらに進むと見て、円の買い持ち(円ロングポジション)を買って持っていたヘッジファンドなどの投機筋が、損失覚悟で円売りに出たことがある。さすがに、日本政府のドル買い・円売りの圧力に耐えられなかったのである。
ただし、これで円高傾向が変わったかといえば、そうではないだろう。欧米景気の先行きなどに不透明要因が多い現在、安全通貨として円への資金の流れが完全に止まったとは考えにくい。今後、介入の効果が低下するにしたがって、投機筋などは円高を仕掛けてくる可能性は高い。
10月末の日本政府のドル売り介入の規模は半端ではなかった。前回の8月4日の介入は、約4兆5千億円といわれている。今回は、その約2倍の規模の介入を実施した。ある為替ディーラーの言葉を借りると、「とんでもない金額のドル買いが一度に振ってきた感じだった」という。
さすがに、それだけの介入が出ると、為替市場の景色は一変する。ブルドーザーが入ってきて、力ずくで"ドル売り"のオーダーを呑み込んでいく。市場の部外者からみれば、まさに壮観という表現が適切かもしれない。政府は、そこまでするほど円高に追い詰められていたということだ。大規模介入のニュースを知った大手輸出企業の経営者は、一様に介入を評価するコメントを出した。
一方、政府・日銀の攻撃で損失をこうむった、投機筋や為替ディーラー連中は大変だ。「当局の介入はいつか来るだろう」と見る向きが多かったのだが、このタイミングで、しかもこれだけ大規模に実施してくるとは予想外だった。ヘッジファンドのマネジャーの一人は、「今日はやられた」と敗北を認めていた。