他の監督とはここが違う
落合博満だけに見えるものがある

週刊現代 プロフィール

 落合監督は常に情報収集に気を配った。中日にはスコアラーが他球団に比べて3倍近くいるというのは有名な話だ。

 情報収集はチーム内に向けても積極的に行った。目の届かない二軍についても、毎日トレーナーの報告を聞き、各選手の状態を正確に把握していた。佐藤氏にはこんな経験がある。

「リリーフ専門の鈴木義広が二軍に落ちてきたとき、調整法の一環として先発させたら、すぐ監督から、『なぜリリーフを先発に使うのか。二軍でもリリーフで使ってくれ』という電話が入った。堂上(剛裕)を外野で使っただけでもそう。二軍の試合のスコアブックまで読み込んでいるんだよ」

「監督はどこで何を見ているかわからない」---中日の選手の間には、常に緊張感と競争意識が植えつけられていった。そして落合監督が植えつけた競争意識は、チームに最大の変化をもたらした。

 練習量の増加である。

 若松氏はヤクルト監督を辞任した後、評論家として訪れた中日キャンプで、選手たちのハードな練習ぶりを目の当たりにして「度肝を抜かれた」という。

「他のチームのキャンプは、大抵4日練習して1日休むペースで行います。でも中日は6勤1休だった。要は開幕後のスケジュールに合わせて練習しているんです。全体練習後もほとんどの選手が残って必死にバットを振っていました」

 最近の中日の練習を見た元プロ野球選手が、思わず「こんなに練習するんですか」と感嘆すると、落合監督はニコリともせず言い放った。

「俺の現役の頃は、もっと練習していた」

 無駄を嫌う落合監督が猛練習を行う理由、それは単純に練習が無駄ではないからだ。

 川崎氏がさらに言う。

「チャンスが突然来るという怖さもあるんです。失敗すると次はないかも知れないですしね。『誰が使われるかわからない』という、落合さんの起用法だと、選手は準備がとても大変なんです。スタメンにもベンチスタートにも対応できるように、常にコンディションを整えておかないといけないですから」

「見られている」という意識

 日本一の「野球眼」をもつ監督に、見られている。選手は常に競争意識を保ち、準備を怠らないように練習を繰り返す。そうして中日は、チーム力を高めていった。落合監督は、同様の効果をコーチにも求めていた節がある。

 '05年~'06年にかけて捕手コーチを務めた秦真司氏は、就任要請のタイミングにまず驚かされた。