Close up 坂本勇人
巨人 初めて明かす統一球との苦闘

フライデー

「自分がチームにとって本当に必要なら、途中で代えられることもありません。悔しい思いをしましたが、自分の力不足をあらためて認識しました」

 非情ともとれる決断をした原監督だが、厳しい処置をしただけではない。オフだった8月1日に誰もいない東京ドームへ坂本を呼び出し、マンツーマンの打撃指導を行ったのである。ともに打撃ゲージに入り、自らバットを持ち、坂本のスイング軌道を確認すること約1時間半。同日の公式ホームページで、原監督はこう記している。

「二人での特訓でした。すぐに結果が出るほど、甘いものではありませんが、坂本も苦しんでいます」

 原監督の厳しくも愛情に満ちた〝親心〟は、坂本にも痛いほど理解できた。

「本当にありがたいです。僕の調子が悪くなると、以前から監督は『お前のバッティングは今こんな状態だから、こう修正してみろ』と一緒に練習に取り組んでくれます。厳しいことも多く言われますが、落ち込んでなどいられません。そんな精神の弱い選手など監督も使いたくないでしょうから、強い気持ちでプレーしているんです。『何くそ!』という思いでね。でも、これほど期待されているのに、今季は本当に不甲斐ない。自分自身が情けなく、たまらないです。早く結果を残し、監督に恩返しがしたい」

阿部の〝殴り書きのススメ〟

 苦しみ抜いた坂本に光明が見えたのは、9月に入ってからだ。原監督から「(統一球に対応しようと)上体が突っ込んでバットが体から離れている」と指摘され、なるべく体の近くでスイングすることを意識。詰まることを恐れずボールを引きつけ、体を軸にコンパクトにバットを振る---この新打法を身に付けたことで、芯でとらえた打球が多くなったのだ。

「体にバットを巻き付けるような感覚です。この感覚で左ヒジを胸から離さないでスイングするようになってから、調子が上向くようになりました」

 反発力の低い統一球でも、芯に当たれば当然ヒットになる確率はぐんと上がる。月間打率も9月は2割9分1厘、10月は3割3分9厘と急上昇。坂本は、好調時の感触を取り戻しつつある。

「タイミングの取り方など、直すべき点は多いですが、今季の前半に比べれば、凡打でも納得のいく打球が増えてきたと思います。前半は悪過ぎましたから。でも、満足できる内容にはほど遠いです。思い通りの打球を飛ばせるようになるまで、努力や改良を続けたい。今季も残りわずかですが、開き直って悔いのないスイングをしたいです」

 坂本が、今季から取り入れた習慣がある。昨年214本の両リーグ最多安打を放った阪神のマートン(30)が、気づいたことを記すというメモを参考に、ノートをつけ始めたのだ。坂本は自分の記した苦しみが、将来、同じように厳しい状況に立たされた時に参考になると語る。