神童の法則 才能はいかにして開花したか。親たちが語る「天才少年・少女」の育った環境、育成理論

第2回 落語家 KOHARU亭たいちろう&けいじろう
フライデー プロフィール

 こうして「ワッハ上方アマチュア演芸コンテスト」優勝者となった啓二朗君は、メディアの注目の的となる。なにせ小学1年生である。「天才落語少年」といった文句が雑誌やテレビに躍った。そして、それは兄弟それぞれの心に、ちょっとした〝痛み〟を残したのかもしれない。真由美さんに意地悪な質問を投げてみた。

---兄弟で結果が違ったことを、二人はきちんと受け止められたのでしょうか。

「二人で一緒にやってきたのに、どうしても啓二朗ばかりが注目されるようになりました。仕方ないんですが、啓二朗の受賞は、太一朗がいたからなんだと家族の私たちは分かっていても、メディアの方々には分かっていただけない・・・」

 インタビュー中、父・祐樹さんは落語と距離を置いているように見えた。祐樹さんは、こう本音を明かした。

「二人は、師匠について落語を本格的に学んでいるわけではない。この子たちの気持ちは『おじいちゃんに笑ってほしい』と病院で話していた頃の延長線上にあるんです。しかし、大賞という箔がついたことで、あちこちから招かれることが増え、お客さんから寄せられる期待も大きくなった。こんな、半端な形で続けていいのかなと、それは正直、思いますね」

 祐樹さんがこう言うのにも、理由がある。実は、啓二朗君の優勝に大きく作用した、ある忠告があった。決勝を迎える前、別の町で行われた小規模の落語イベントにも啓二朗君は参加しており、その席で快調にウケを取った。ところが子供落語家として先輩格にあたる少女から、こう尋ねられたのだ。

「ねえ、落語をどうやって覚えてる?」

 CDを〝耳コピー〟していると告げると、少女は「やはり」と得心して、こんなアドバイスをくれた。

「動画を観て覚えたほうがいいよ。落語には決まりがいろいろあるから」

 客席から見て右手が上手で左が下手。登場人物が家に上がる際は下手から上手に目を遣り、家主は上手から下手へ目線を配る・・・。基本がスッポリ抜け落ちていることを思い知らされた瞬間だった。

 祐樹さんの懸念は、こうした〝姿勢〟にあるのだが、真由美さんは「プロを目指すわけじゃないから」と、あえて意に介さないようにしている。そんな具合に、両親の方針の違いを聞いていた際、先述の真由美さんのセリフが登場したのだった。

「伝統とかって大嫌いなんですよね。こうしなきゃいけないと言われることが、とにかくイヤでたまらない」

 落語の道には進ませたくないという兄弟落語家の母の本音には驚かされた。東京と大阪には寄席があり、落語家に入門する環境が整っている。だが、名古屋にはそれがなく、落語家もほぼ住んでいない。江戸、上方それぞれの伝統芸能の世界とは無縁でいられる環境にある。

「伝統があり、師弟関係が確立している世界も立派だとは思います。でも、自由奔放なこの子たちは、『落語』じゃなく『楽語』でいいんじゃないかなって」