筆者 本郷明美(ライター)
「なんてったって信長!」
唐突にすみません。織田信長の「食」の記録を読んでいると、どうにもこのひと声、かけたくなるんです。戦国武将のなかでも奇人・強烈な性格として名高い信長らしい逸話揃いなのである。
まずは信長さま十代、まだ初々しい・・・と言いたいのだが、すでに巷では「大うつけ(大ばか)」として知られていた頃のこと。着物をはだけさせ肩はもろだし、髪は茶筅髷。ま、ポニーテールのような髪型ですね。この茶筅髷、当時大流行だったとのこと。信長、ファッションには敏感だったのだ。
そして稀代の派手好き! 信長は自分の髷を紅色や萌黄色など色とりどりの糸で結わえ、朱い鞘の大刀を腰に刺し、お付きの者の武具も朱色で統一(!)させていたというから相当である。ちなみに、信長の領地であった近江八幡名物の「赤こんにゃく」は、派手好きな信長が赤くさせた、という説が残る。信長の派手好き、「赤好き」はかくも有名なのである。
信長さま、そんなド派手ファッションで街中を闊歩する。いい。そこまでならかっこいい。が、おやおや歩きながら栗と柿をかじる! 次に食べ出したのは瓜? あれ、餅まで喰っちゃう?
「もうっ信長さまったら幻滅っ」
なんて、密かに憧れていた町娘が言ったかどうかは知らないが、これは相当な非常識。
街中でものを食べるだけではない。食べながら人に寄りかかったり、肩にぶらさがったりしたというから、ほんと猿レベル。
とはいえ、私たちは信長がただの「大うつけ」ではなかったことを知っている。その後信長は数多の戦いを制し天下統一を果たす。
「腹が減っては戦ができぬ」。戦いが続く毎日、信長はもちろん食べる、食べる。天下に名高い桶狭間の戦い前、やはり立ったままご飯を食べて「いざ出陣!」。
家来たちはついていけたのか?
「さっ参るぞ」