ついに、今回が「宋銭編」の謎解きです。
銅がほしかった寺社勢力により輸入されてきた、"モノ"としての宋銭。
そして、それを日本で"貨幣"として流通させることをひらめいた男、平清盛。
一体、なぜ清盛は、宋銭を貨幣として使おうと思ったのでしょうか?
貨幣導入がいかに大変かは、以前お話ししましたが(第2部1話・3ページ)並大抵のことではありません。
それでも宋銭を日本の通貨にしようとしたのは、そこに経営者・清盛が「どうしても手に入れたいもの」があったからです。
それは、
1.国を発展させる力
2.経済を自由に動かす力
3.平家に財をもたらす力
です。
「1.国を発展させる力」---それは、貨幣の利便性が生み出す力です。
当時の交換手段だった絹は、品質に応じてランクを上・中・下と3段階に分けており、取引のたびに「この絹はどのランクかな・・・・・・」と見極める手間がかかりました。
それに比べ、単純に1枚=1銭と数えればすむ宋銭ならば、取引は格段に楽になり、取引コストが低下します。
また絹は小さく切りすぎると反物としての価値がなくなるのに対し、貨幣は1銭単位まで小分けできるという決済の汎用性があります。
さらに米などに比べてかさばらず、輸送コストの低下も期待できます。
このように、貨幣を媒介とすることで取引が迅速・活発になれば、商業は発達し、国が発展していきます。
この変化を、清盛は貨幣導入をはかることで意図的に起こそうとした・・・いわば清盛流の"景気対策"だったのです。