高熱を押してでも仕事の現場へと彼女を駆り立てる理由も、きっとそこにある。由美子さんは言った。
「あの子が弱い面を見せないのは、自分の弱さを認めたら、ダメになってしまうという恐怖があるんでしょうね・・・」
由美子さんは、「帯広に帰りたい」とも口にした。部屋からは、まやさんが歌うスカイツリーが遠くに見えた。
好きな演歌で一曲当てて・・・

インタビューの数日前、由美子さんはまやさんを叱った。中学生用の学習ドリルを、熱心にやり過ぎたからだ。
「ご飯の前に問題を解いて、ご飯を終えてもリビングで夢中になってドリルから目を離さないんです。6~7時間もですよ。『そんなに勉強していたら、バカになっちゃうよ』って叱りました(笑)」
泥団子作りに見せた集中力が今も衰えていない、とも受け取れるが、一義さんはまやさんの思いを、こう汲んでいた。
「先んじて中学の勉強を進めようとしているのは、仕事と学業の両立が難しくなった時のことを恐れているからでしょう」
由美子さんが付け加える。
「親にも言えない仕事のストレスを、勉強に集中することで忘れられるのかも」
将来、まやさんにどうなってほしいかを由美子さんに尋ねると、「普通に結婚して、子供を生み、そして私のように子育てを楽しんでほしい」と答えが返ってきた。芸能界に入る前と今とで、思いは変わっていない。
〝天才演歌少女〟の両親は、今でも、夢中になる対象は「演歌でなくても良かったのでは」との思いが過ぎるという。それでも、まやさんのちょっと大人びた当面の目標に、複雑な胸中を抱えながらも、この家族は一丸となってしまうのだ。
「好きな演歌で一曲当てて、お世話になった人に恩返しをしたいな」
(以下次号)
取材・構成 片瀬京子(ライター)
現代ビジネスブック 第1弾
田原 総一朗
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