どう闘うべきなのか、そもそも闘えるのか
いつかあなたも直面する「末期がん」の大研究

週刊現代 プロフィール

 がん細胞が増殖して大きくなるにつれて、神経を圧迫する圧力も増していく。放置していた場合、がん細胞の圧力は次第に増大するので、痛みも募る一方になってしまうのだ。

「腹痛や頭痛といった病気の痛みは、強くなったり弱くなったりします。ところががんの痛みは、放置した場合はずっと痛み続けるうえに、限りなく強くなる一方なのです」(平岩医師)

痛みの心配はいらない

 がんの痛みが恐れられてきた最大の理由も、ここにある。けれども痛みをコントロールする緩和ケアが発達した今日では、昔のような脅威ではなくなっている。痛みのコントロールが可能になっているからだ。

 聖路加国際病院の緩和ケア科医長、林章敏医師の解説を聞こう。

「がんの全過程の中で、約8割の方が痛みを経験されると言われています。では、8割の方が我慢できないくらいの痛みを経験しているのかというと、そうではない。そのうちの9割ほどの痛みは相当改善されて、ゼロとはいわないまでも、耐えがたい痛みではなくなっているのです」

 痛み止めに使える麻薬は、かつてはモルヒネ1種類だけだった。けれども今は、3種類に増え、形状も飲み薬・貼り薬・座薬など、痛みや症状に応じて処方できるようになっているのだ。

 林医師が続ける。

「副作用が軽減されたものが開発されて、適用の幅が広がっています。また、医師の意識も変わってきている。昔はモルヒネは最後までとっておく薬とされてきましたが、最近はがん治療の初期から使おうという傾向にあるのです。『さきがけ鎮痛』と言うのですが、これをやると、後々痛みが強くなるのを抑える効果があります」

 前出の平岩医師も、こう言い切る。

「今は、痛みに関しては、ほぼ完璧にとることができると言えます。もし痛いとすれば、医師の薬の処方の仕方が悪い。まれに難しいケースもありますが、使い方さえ誤らなければ、患者さんはほとんどの痛みに耐えられるし、痛みながら死ぬことはありません」

 死の刹那の苦しみも、心配する必要はないと言うのは、前出の小野寺医師だ。

「多くの場合、死亡する数日前から終日眠っているような状態になり、声かけに対する反応も次第になくなります。痛みや呼吸苦などの身体的苦痛を十分とっているかぎり、『春眠の暁』のような良い気分でいる人が多いように思います」

 末期がんの特殊なケースに「臨死体験」がある。

「ショック状態になったり、急に呼吸苦が出たり、著しい高熱が続いて一時的に意識がなくなってから回復する人がいます。そのとき、『花の咲き乱れる丘の上や、無限に続く美しい草原』など、大自然の美しい場所にいたという人や、『病臥している自分を上から見ていた』、『棺に入れられる自分を見ていた』などと語る人がいます。いわゆる臨死体験ですが、これは休止していた大脳が再び活動するときに起こる現象です」(前出・小野寺医師)