Close up 長野久義
「巨人の新4番、知られざる苦闘」

フライデー プロフィール
打撃力を活かすため、大学3年の時に内野手から外野手に転向。だが昨年記録した5失策は、リーグ最多だ

 日大から「Honda」に進んだ長野は、社会人でも打ちまくる。'09年の都市対抗野球で19打数11安打、打率5割7分9厘で、首位打者を獲得。Hondaの13年ぶりの優勝に貢献したのだ。だが、そんな好打者・長野も、翌年にドラフト1巡目で入団した憧れの巨人軍の春のキャンプでは度肝を抜かれることになる。

「阿部(慎之助、32)さんやラミちゃんが、軽々と打球をスタンドに運んでいたんです。『これまでとはレベルがまったく違う。ついていけるだろうか』と、不安になりました。パワーでは勝負できそうにない。まずは、持ち味の広角に打てる打撃を磨こうと思いました」

 自分の持ち味で勝負する。これが奏功し開幕一軍を勝ち取った長野は、安定した成績を残し新人王を獲得する。打率2割8分8厘、52打点。本塁打19本は、巨人の新人としては高橋由伸(36)と並び歴代3位の記録だ。だが課題も残った。原監督も指摘した通り、シーズン後半に失速してしまったのだ。8月は79打数29安打で3割6分だった月間打率が、9月は33打数5安打の1割5分2厘に急降下。長野も「1年間通じて活躍できる体力が必要だと感じました」と振り返る。

 こうした反省から、今年はシーズンが始まる前から徹底した肉体改造に取り組んだ。食事は専属のシェフに低脂肪、高タンパク質の鶏肉中心の食事を作ってもらい、腹筋と走り込みで体重は2~3kg増。1月にグアムで行われた自主トレには、〝秘密兵器〟を持ち込んだ。

「1.5kgの超重量マスコットバットです。力強い打球を飛ばせるように、スポーツ用品メーカーに特別に作ってもらいました。あれだけ重いと、上体の力だけでは振り切れません。重いバットで素振りを繰り返すことで、身体全体をうまく使えるようになったと思います」

 普通、プロの打者が使うバットの重さは900g強。マスコットバットでも1.2kgほどだ。長野のバットが、どれほど〝桁外れ〟か分かるだろう。

「年末に観た番組での宮里藍さん(26)の練習も、参考にさせてもらいました。宮里さんは1分間かけて1スイングする、超スローの素振りをしていたんです。速いスイングでは、正しい軌道を確認できない。僕もフォームがブレないよう、ゆっくりとした素振りを取り入れました」

 結果はすぐに現れた。4月12日のヤクルトとの開幕戦では、3ランを含む5打数3安打5打点の活躍。本塁打はこれまで14本と、統一球に多くの打者が苦しむ中、昨年と同じペースで打ち、打点は57とすでに昨年を上回っている。

「今年は9月に入っても、調子は落ちていません。昨年はクライマックスシリーズで中日に敗れ悔しい思いをしたので、最後まで成績を残し、優勝したい」

 昨年の悔しさが、どんな形ででもヒットを望み、「僕が打てば負けない打者になりたい」と力強い言葉を発するまでに、若き主砲を成長させたのだろう。

「週刊現代」2011年10月14日号より