Close up 長野久義
「巨人の新4番、知られざる苦闘」

フライデー
長野の打撃練習を見つめる原監督。「今の成績で守りに入ってはダメ。もっと成長してほしい」と期待を寄せる

宮里藍から学んだ練習法

 長野の打撃の特徴は、身体の軸がブレず、どんな球も広角に打てる柔軟性にある。このフォームが確立したのは、大学4年生の春。だが、そこに到るまでには知られざる苦闘があったのだ。

 大学3年生までの長野は、通算打率2割2分7厘、3本塁打と平凡な成績の選手だった。左足のステップが大きく、上体が前に突っ込みがちで、外角のスライダーに手を出す悪い癖に苦しんでいたのである。道は意外なことから開けた。

「誰かのアドバイスや独自の研究によってではなく、〝ケガの功名〟でした」
と長野は振り返る。

「日本大学4年生の春の東洋大戦で、左足首を骨折してしまったんです。骨折してからは痛みで、それまでのように打つ瞬間に左足を前に大きく出すことができず、ステップが慎重になってしまいました。でも、それが良かった。ステップが小さくなった分、ボールを手元まで呼び込めるようになったんですよ。打つ時に身体が前に突っ込むこともなくなり、右足1本で回転するような感覚で、力まずに打てるようになりました」

 結果は歴然としていた。'06年春の東都大学リーグでは、骨折して以降33打数19安打、打率5割7分6厘と大活躍。終わってみれば打率4割8分9厘で、初めての首位打者に輝いたのだ。

 長野の打撃のもう一つの特徴は、ベースから離れて立つことにある。このバッティングスタンスを身に付けたのは、外角のスライダーに手を出してしまう〝悪癖〟を克服するためだったという。

「頭では『手を出してはいけない』と分かっていても、なかなか直らない。そこでデータを分析していた大学の後輩に相談すると、こうアドバイスしてくれたんです。『バッターボックスで、ベースに近寄り過ぎているんじゃないですか』と。それから意識的にベースから離れるようにしたんですが、あえて遠く離れることで外角を捨てることができました。バットが届く範囲なら多少のボール球でも打ちたくなりますが、バットが届かなければ仕方ありません。後輩の一言で、ボールを見極められるようになったんです」