私たちの豊かな「貧乏」生活

「シェアハウスに住むのは、貧乏だからでしょ?」
「車をシェアするのって、貧乏だから買えないからでしょ?」

 そんな、価値観をもっている人を、仮に「金持ち」族と呼ぶとしましょう。もしあなたが、「金持ち」族だとしたら、「シェアエコノミー」という先進国で顕在化しつつある動きを見逃しているのだと自覚したほうがいいかもしれません。

 たしかに、今や、年1000万以上の賃金を稼ぐのは至難のワザです。でも、ある人々、そうですね、ここでは、あえて、「貧乏族」と呼びましょうか(笑)。彼ら、彼女らは、年1000万稼ぐ方向性を志向しておらず、物質的な意味での本当の貧乏を経験したことはありません。生まれたときから、どちらかというと「金持ち」族の両親に十分にいろんなものを買ってきてもらいましたし、十分にいろんなものが家の中にありました、もちろん家は持ち家でした。

 さて、今、日本においても「貧乏族」が増えようとしているのです。「貧乏」族は、「物を所有することをイケテナイ」と思ってしまいます。「それって、シェアできるよね? 情報化しちゃえるよね? そんな物を所有するってマジ効率悪くなーい?」なんて意見は私の周りではよく耳にしますね。

今「貧乏」族が、増える原因はどこにあるのでしょうか?

 まず1つ目としては、冒頭でも言ったように「貧乏」族は、本当の貧乏を経験したことがないことがあげられるでしょう。戦後すぐに生まれたおっちゃんなんかは、日本が本当に物質的な意味で貧乏な状態を経験しているかので、シェアなんて言うと自分が貧乏だったことを思い出して、「惨めだね~」みたいな感覚をもつようなのですが、私たちからするとさっぱり意味がわからないのです。

 生まれてこの方、衣食住に困ったことなんて1度もありません。本当の貧乏は想像の世界、ファンタジーです。ですから、物を買えないことor買わないことにまったくもって引け目を感じないのです。今や、貧乏は、あえてする「貧乏」になったのです。もっと極端な話を言うと、一部の人にすると、贅沢な遊びになっています。

 2つ目に挙げられるのは、日本に充満する閉塞感です。メディアや巷の人々が口を揃えて言うのが、「年金がもらえない」「日本はこのままじゃ世界に取り残される」ホントに嫌気がさすぐらいに暗い話ばかりなのです。そういうわけで、将来がわからないのであれば、「身軽」でいたいという思いを強くします。

 つまり、いつでも、好きな時に、自分を変化させることができる、物理的自由を手にしたいと思うのです。だから、家や車などのような、固定費も高く自分を拘束するものは、絶対に買いたくないし、必要ならばシェアサービスですませたいと思うのです。

 3つ目にあげられるのは、アメリカでおこった、リーマンショックです。これは、9.11テロと同レベルの、象徴的な世界の事件になりました。リーマンショックによって人々は、「アメリカはだめかもしれない」という無根拠な共同幻想を抱くようになりました。ですので、リーマンショックのイメージに関連するアメリカ的なものが、忌避され始めたのです。

 ようするに、「消費主義」が「悪」に仕立て上げられてしまったのです。消費主義は資本主義を駆動するドライブですし、そんなに目の敵にして駆逐すべきものとは思いませんが、とにかく時代の雰囲気は、消費主義ってなんかダサくないっ? て感じになってしまったわけです。そういうわけで、ますます人々は無駄な物を買わなくなりました。

 4つ目は、私が本コラムで何度も言っている露出社会の出現です。スマートフォンが急速に普及し、twitterやfacebookやgoogle+といった、リアルの人間関係と変わらない社交の場のが生まれました。これによって、人々は、いろんなものをシェアしやすくなりました。

 たとえば、「家」や「車」をシェアするサービスは今までもありましたが、これからは個人間でのシェアがもっと増えていくでしょう。また、露出社会における情報発信による互いの承認は、人々が物を買って自己顕示し承認してもらう意欲を極端に削いでしまうことにもつながっています。

 以上のような4つの観点から見ても、これからますます「貧乏」族は増えそうだと感じています。ここまで読んでこられたビジネスパーソンは、これじゃあ商売あがったりじゃないかと感じられたかもしれません。では、「貧乏」族を対象としたビジネスは今後難しくなるのでしょうか? 

 たしかに、個人向けの購入型ビジネスは相当厳しい戦いが強いられるでしょう。ただし、「貧乏」族はシェアをコミュニケーションの一貫として楽しんでいる傾向があります。この点に注目すれば、ビジネスが成立するかもしれません。「貧乏」族は、車や家を買わないからといって、それらを利用しないというわけではありません。いやはや、「貧乏」族の今後の展開は要注目です。

 最後まで読んでくださってありがとうございます。

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