田原総一朗×野口修司「『情報をすべて出す』にこだわり続けたジュリアン・アサンジ」
「誰も知らないアサンジの素顔、ウィキリークスの裏側」最終回第4回はこちらをご覧ください。

田原: 野口さんの次のターゲットはなんですか?
野口: アサンジにはもう一回、インタビューをしたいですね。
田原: ほかには?やっぱり、中国じゃないですか? 中国へは行く気はないんですか?
野口: いやあ、まあ・・・。
田原: ま、危ないかな、行ったら。
野口: いや、そんなことないです(笑)。
田原: 行ったら、逮捕されたりして。
野口: キューバの取材では、CIAのエージェントだと思われましたね。それでほとんど国外追放みたいな形になりました。
田原: キューバにもいらした? じゃあ、カストロとも?
野口: いや、あの時はインタビューできなかったですね。申し込んで、できそうになったんですけど、結局、カストロがインタビューに応じたのは女性のマリア・シュライバーっていう、あっちの方に。
で、周りの人に言われましたよね、カストロは女好きだから、絶対、女のほうに行くよって(笑)。

アサンジの戦争』
著者:デヴィット・リー&ルークハーディング
訳:月沢 李歌子 島田楓子
講談社
定価1,890円(税込)
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ウィキリークスの姿勢は変わらない
瀬尾編集長: いくつか質問が来てますので、いいですか?
野口: どうぞ、どうぞ。
瀬尾編集長: もしも、アサンジが逮捕されなかったら、アサンジはこれからウィキリークスをどうしようと思っていたか、将来、どういうふうにしようと思っていたんでしょうか。
野口: 逮捕されてもされなくても、された場合は周りの仲間がやるんでしょうけど、最初からの理念、さっき言ったように、第一情報を公開して、それで世界を良くするということは同じだと思います。変わりはないと思います、それは。

瀬尾編集長: アサンジがめざした「新しいジャーナリズム」を、わかりやすく表現すると、「一次情報の公開」ということになりますか?
野口: はい。いままでの大手メディアでも、一次情報の公開はやってきたんです。ただ、彼の場合にはすべてなんです。内部告発で手に入れた情報のすべてを公開するということです。たとえば、ある内部告発で一部だけ手に入った情報があるそうですが、残りのすべてが届くのを待っているんだと言ってました。そうすると、全体像が見えてくる。情報のすべてを出すという部分が、大手メディアとの違いなんです。個人名を出すことは、内部からの批判もあって、あきらめたわけですけれども。
瀬尾編集長: これまでのジャーナリズムに、必ずついてまわるものとして、どういうテーマを扱うのかとか、入手した一次情報のうち、どの部分をどういう形で出すのかという編集作業があると思うんです。アサンジはそういうことには否定的ということですね。
野口: そうですね。彼が批判しているのは、アメリカを中心とする既存の大手メディアだったんですけれども、その理由は、彼らが入手した一次情報を自分たちのフィルターにかけて、一部しか出していなかったからです。それを彼は批判してるんです。
田原: 一部しか出さないというのは、アサンジに言わせれば保身だということですね。
野口: ええ。大切なのは、職業ジャーナリストの判断が当たっているかどうかなんです。もしかして、職業ジャーナリストの判断が間違っていて、情報として出さなかった部分、フィルターにかけてしまった部分に、世界が必要としている情報があるかもしれないじゃないかと。だから、アサンジは自分を本当のジャーナリストだと言っているわけです。しかし、逆に批判もあるわけです。編集をはじめ、手を加えるのがジャーナリストなんだという批判ですね。

田原: 日本ではテレビも新聞も、政府にとって都合の悪い情報は出しますが、自分たちの会社にとって都合の悪い情報は出しませんよね。
野口: ええ、それをアサンジは言ってるんですね。だから、彼は基本的に全部出すわけです。そして、世界のみなさん、すべて見てください、考えてください、行動してくださいと。これは変わらない。
たとえアサンジが刑務所に入っても、ウィキリークスのこの姿勢は変わらないと思います。