かつての王者はいつも以上に苛立っていた。
男子ゴルフ「ドバイ・デザート・クラシック」最終日(2月13日)。タイガー・ウッズ(35歳)は、12番でパーパットを外し、思わずグリーン上でペッと、ツバを吐いてしまった。
この行為は欧州や豪州のテレビで「紳士にあるまじき所業」と大バッシングを浴び、欧州ツアーから罰金を科せられてしまう。
だが番記者の多くは、ツバ吐きを「またか」という気持ちで観ていた。
「不調になるとツバだけでなく、子供へのサインも断っていた。これまでは見逃されていたことも、今の体たらくでは無視できなくなったのだろう」(米有力紙記者)
ゴルフネットワーク解説者の冨永浩プロが語る。
「もはやウッズは怖くない。ティショットを曲げてもバーディにまとめられた、以前の超人的なパットは見られない。全盛期を知らない若手には、フィル・ミケルソンあたりを意気消沈させてきた、ウッズの神通力がもう通用しないんです」
今回も最終日をトップと1打差でスタートしながら、20位で終了。17試合連続未勝利となってしまった。
勝てない苛立ちはさらなる悪循環を呼ぶ。英ガーディアン紙のローレンス・ドネガン記者は言う。
「彼のイメージは地に堕ちた。不倫スキャンダル以降、注目と金は集めるが、勝てないから執拗に叩かれる」
近々発表するとされていた新スポンサーも、いまだに未定のままだ。今回の罰金は、おそらく5000ポンド(約70万円)程度。ウッズにとっては微々たる額だが、金額の何倍ものダメージを受けた。
ウッズも復権に必死だ。昨年5月には長年連れ添ったコーチを解雇し、現在スイングを改造中だという。
「目標はジャック・ニクラウスのメジャー18勝の更新のみ。達成すれば名誉も取り戻せる。でも飛距離を稼げない今のウッズで勝てるのは、コースの短い全英オープンくらいでしょう」(全米ツアー関係者)
ベテランの域に入ったウッズに残された時間は少ない。女性問題と不振に喘いだまま過去の選手になってしまうのか。奇跡の復活へ、人生をかけた大勝負が始まる。
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