一転し、東京の政治エリートと歩調を合わせ始めた朝日新聞の「沖縄報道」

日米首脳会談報道を読み解く
佐藤 優 プロフィール

 ニューヨークでの日米首脳会談後、米側はオバマ大統領から「結果を求める時期が近い」と早期実現を求めたことを発表したが、首相は「(記者に)ブリーフした方の個人的な思いが出たのではないか。大統領は『その進展に期待する』という言い方だった」と否定した。石原伸晃氏(自民)への答弁。 〉

 毎日新聞は、この野田首相の答弁に関して、過去の自社の報道と矛盾するが、伝える責任があると考えたのであろう。これに対して、朝日新聞は野田首相の答弁にニュース性を認めていない。この感覚が、沖縄の政治エリート、有識者、マスメディア関係者には理解できないのである。そして、この人たちが朝日新聞は沖縄の気持ちを理解する努力をやめたという認識を抱き始めている。

 偏差値秀才の論理からすれば、「うち(朝日新聞)は、あくまでもキャンベル国務次官補を主語として、『両国は結果を求める時期が近づいている、と理解している。その点は大統領が非常に明確にした』という発言を報じたので、誤報ではない。」ということなのであろう。しかし、それは姑息だ。

 朝日新聞も、〈 大統領は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設について、具体的な結果を出すよう野田首相に要求。首相は同県名護市辺野古に代替施設を建設する日米合意の早期の履行を迫られた。 〉(9月22日asahi.com)という基本認識で、紙面を構成し、解説と社説を書いたからだ。オバマ大統領が、「具体的な結果」を要求し、「早期の履行」を迫ったという事実関係が問題になっているということは、報道内容を検証しなくてはならない根源的問題だからだ。

 普天間問題のハンドリングを誤ると、米海兵隊だけでなく沖縄のすべての米軍基地が住民の敵意に囲まれる。米軍基地と共に自衛隊に対する忌避反応も強まる。そして、沖縄に日本からの分離傾向が生じる。そして日本の国家統合に危機が生じる。日米首脳会談に関して、9月23日朝刊に掲載された社説に朝日新聞はこう記した。

〈 いまの日米関係に突き刺さった最大のトゲは、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題だ。 大統領は初顔合わせにもかかわらず、具体的な結果を明確に求めてきた。首相も日米合意の実現に「沖縄の理解を得るよう全力を尽くす」と応じた。

 現行計画が一向に進まず、米国側がいらだつ事情はわかる。しかし、首相のいう「沖縄の理解」がもはや得られそうにないことは、誰の目にも明らかだ。

 つい最近も、沖縄県の仲井真弘多知事が米国で講演し、きっぱりと県外移設を求めた。日米合意が強行されれば「全県的な激しい基地反対運動につながり、日米安保体制に悪影響を及ぼしかねない」と警告もした。

 知事が米国社会に向けて直接発したメッセージは重い。

 日米安保体制の安定的な維持のため、両国政府はともに打開策を探るしかあるまい。同盟の知恵としなやかさが試される。