一転し、東京の政治エリートと歩調を合わせ始めた朝日新聞の「沖縄報道」

日米首脳会談報道を読み解く
佐藤 優 プロフィール

 事実、この「書き分け」をしたので、朝日新聞は、カギ括弧つきで事実でないオバマ発言を報じるという誤報からは免れている。オバマ大統領が野田首相に対して、「結果を求める時期に近づいている」という発言の事実関係について、9月26日の衆議院予算委員会で、否定した。琉球新報の報道が詳しいので引用しておく。

〈 首相「結果求める」否定 米大統領発言、衆院予算委で答弁

 【東京】日米首脳会談で米軍普天間飛行場移設問題について、オバマ米大統領が野田佳彦首相に対し「結果を求める時期に近づいている」と発言したとされる件で、野田首相が26日の衆院予算委員会で発言の事実を否定した。野田首相は「大統領本人というよりも、ブリーフ(説明)をした方の個人的な思いの中で出たのではないか」と述べた。石原伸晃議員(自民)に答えた。

 オバマ大統領の「結果を求める時期」については、米国務省のキャンベル次官補が記者団に説明していた。

 キャンベル次官補は「日米双方とも結果を求める時期に近づいていることを理解している。その点は大統領も非常に明確にしていた」と言及。それを受け、日本側メディアが大統領発言として報道し「米の強硬姿勢が鮮明」などと解釈を付けていたが、野田首相の認識と大きく食い違っていることが浮き彫りになった。

 野田首相は26日の衆院予算委員会で、首脳会談での普天間に関する議論の中身について「(危険性を)固定化することなく、負担軽減を図っていくという説明をして、沖縄の皆さんのご理解をいただくという基本姿勢を述べた」と説明。大統領の発言については「『その進展に期待する』という言い方だった」と述べ、報道された発言内容を否定した。「結果を求める時期」との発言については「ブリーフをした方の個人的な思いの中から出たのではないか」と指摘した。 〉

 野田首相の答弁は、質問通告を受け、外務省が答弁要領を作成した上でなされる。日米首脳会談の記録に、オバマ大統領が「結果を求める時期に近づいている」という発言は存在しないのである。しかも、米国側のブリーファー(説明者)に関して、野田首相が、国会答弁で「大統領本人というよりも、ブリーフ(説明)をした方の個人的な思いの中で出たのではないか」と述べたのも異例の事態だ。

 なぜなら、首脳会談の内容を正確にマスメディアに伝えるのが説明者であるキャンベル国務次官補の役割だからだ。ここで、野田首相が「米国側の思い」ではなく「個人的な思い」と述べたことも重要である。「個人的な思い」をあたかも大統領の発言のごとく述べることは、公務員の公私混同であり、外交ゲームに不必要な混乱を持ち込むからだ。

 いずれにせよ、「結果を求める時期に近づいている」という報道を行ったマスメディアは、国民に真実と異なるニュースを伝えたことになる。それについては報道を修正するのが職業的良心に照らした責務である。毎日新聞は、9月27日朝刊で、こう報じた。

〈 野田首相:普天間の辺野古移設、米大統領「結果求める時期」発言否定---衆院予算委
野田佳彦首相は26日の衆院予算委員会で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の沖縄県名護市辺野古への移設時期について「いつまでにと明示するのは困難だ」と強調し、「誠心誠意、説明しながら、(沖縄県側の)理解をなるべく早い段階で得られるようにしたい」と述べた。