平松邦夫×内田樹「『落ちこぼれ』こそがイノベーションを起こす」

「教育は誰のためにあるのか」とことん語ろう 最終回

内田: 不可能ですよ。萎縮した人は人を信じませんから。萎縮して、恐怖心を持って、おどおどして、周りを不審の目で見てるような先生が教壇に立って、その先生に向かって「子どもの可能性を信じろ」なんて無理ですよ。「子どもを信じる」というような危険な決断は、教師自身が人から信じられていなければ出来やしないです。だから、教育行政のトップの仕事は、教師を信じることなんです。どんなに今、出来が悪くても、いずれ素晴らしい仕事をするだろうと信じる。

一同: (笑)

内田: 目をつぶって信じる。こちらが信じた時に初めてひとりひとりの先生たちの潜在能力が開花するわけですよね。これはもう同じことの繰り返しなんです。信頼が信頼を生み出す。信頼が次の世代に継承されることなんですから。

「アジール」としての学校が地域社会を再生する。

平松: それは、地域社会という単位に置き換えても同じことが言えると私は思うんですよ。教育から少し離れますけれども、大阪市では今、「地域活動協議会」というものをつくろうとしていて、その単位を小学校単位にしたいと思ってるんです。要は、そのあたりに生まれ育った子どもたちはみんなここ来る、という場所。で、ここに来たら誰が面倒見るんや、先生だけに任せとくわけにいかんやろ、ということで地域の人たちがその中に一緒に入っていくという形ですね。

 今の学校というのは、授業時間が終わって門を閉じてしまうと、誰も入れないみたいな形になってしまっている。そうではなくて、地域コミュニティの核というか、拠点みたいな存在として動いていってほしい。もちろん今でも、地域によってはいろいろと、夜に学校を使ってくれているところもあるんですけれども、それを公として、そんなふうに使っていただく方向に持っていきたいな、と。せっかくこの狭い大阪市域にたくさんの学校がありますからね。

瀬尾: 大阪は町内会の組織率がすごく高いそうですね。

平松: そうなんです。今は7割をちょっと超えるぐらいですが、かつては9割が町内会に入ってた時代があったらしいです。それでも、人口が267万人の大都市とすれば、7割以上の町内会組織率というのはすごいと思いますが、一方で、その7割が全員地域のために動いてるわけじゃないんですよね。その辺を役所がサポートをさせてもらい、地域社会総ぐるみで子どもを育てると言いますか、そういう仕組みをつくっていきたい。そして、これをどう具現化していくかを考えると、やっぱり学校、それも小学校が拠点にならなあかんと思うんですけどね。

内田: いいですね。

瀬尾: 教育だけではなく、学校を中心に地域コミティの再生にもつながるという両方の効果があるんですね。