2011.09.30(Fri) フライデー

福島の農業セシウム汚染「放射能と共存するしかない」

筆者プロフィール&コラム概要
(左上)ウクライナにあるイヴァンコフ市の中央市場。地元の主婦たちが世間話をしながら買い物を楽しんでいた
(左下)市場のラボには6人の研究員が常勤し、販売される食品を検査している。左の放射能測定機にサンプルを入れ、測定を行う
(右上)ウクライナでは今でも牛は定期検査を受ける。線量が高い牛には汚染度を低減させる対策が講じられる
(右下)キノコやベリー類などの山の幸は、25年経った現在でも、基準値を超えることがある。注意を喚起するチラシが市場に貼ってあった

政府に頼らない日本の農家

 福島ではどうか。放射性セシウムに汚染された牛が見つかり騒ぎになったのは、福島第一原発の事故から4ヵ月も経った7月のことだった。日本では、牛の餌となる稲わらへの認識が欠如していたため、牛への放射能汚染が全国に広がってしまったのだ。全国紙社会部記者が言う。

「福島県外の稲わらも放射能に汚染される可能性が見落とされ、宮城県北部から流通した飼料を食べた新潟県、山形県などの牛からもセシウムが検出された。6月に、稲わらの産地である宮城県登米市で、県と市、それに畜産農家の代表が話し合った際、稲わらについて質問が出たのに、県側はまったく問題にしなかったのです」

 その後、国・県の対策に変化はあったのだろうか。福島県鏡石町で、乳牛と肉牛を合わせて約150頭飼育する畜産・酪農家の菅家信也さんを訪ねた。

「肉牛は出荷前に検査しますが、場所は郡山市にある食肉流通センター1ヵ所しかない。県内に2000以上の生産農家がいるのに、検査は1日36件しかできない。みんな順番待ちで出荷時期が遅れてしまう。しかも2万円ほどかかる検査費用はこっち持ち。出荷停止の間はエサ代だけで月400万円ぐらいかかった。検査を待ってる間もどんどん牛が生まれて増えていって、エサ代が余分にかかるんです」

 しかも、生産方法について具体的な指示はないのだという。そこで菅家さんは、独自に、牛の飼料にある工夫をしている。餌に、セシウムを吸着して排出させる性質を持つ化学飼料ゼオライトを混ぜているのだ。ロシアのプルシアンブルーと同様の措置だ。これは、県の指導ではなく酪農家仲間からの情報で始めた。

 しかし、そんなふうに工夫を重ねても福島産牛肉の値段は下がっている。以前は1頭100万円していたものが、40万円ほど。売れても暮らしていけないという。

 一方の野菜・米農家はどうか。郡山市の卸売業・熊田隆治さんが言う。

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