Close up 歳内宏明
福島・聖光学院「負けない男でいたい」

フライデー プロフィール
息抜きは「野球漫画を読むこと」。お気に入りは『ダイヤのA』(寺嶋裕二著)

斎藤智也監督(48)が振り返る。

「強豪校相手の練習試合でのことです。リリーフで出した歳内が、いつものように打たれだして止まらない。その試合は最後まで彼に投げさせると決めていました。ですが6、7番手の控え投手たちが私に『歳内に何かアクシデントがあったら試合を続けられないから、自分たちも準備しておきます』と言って、ブルペンに行ったんです。彼らは歳内の1つ上の3年生でしたが、チームにとっての最善の行動を自発的に取った。試合後のミーティングで歳内にそのことを伝えました。『お前、恥ずかしくないのか?』と」

 その時、初めて部員たちの前で泣いたと、歳内は言う。

「控え選手やマネージャーなど裏方のみんなに支えられて試合ができるということが、ようやく理解できたんです。それまでは自分のためだけに投げてきたんですが、チームメートのために投げたいと思うようになったんです」

 そして、夏の県予選が迫ってきた6月、新たな武器のスプリットを手に入れて、歳内は文字通り〝化けた〟のである。

「それまでも使っていた球種なんですが、せいぜい110km/h程度で、監督からは『しょんべんカーブ』と言われていました。それが、ちょっと握りを浅くしたら落ち方は同じなのに球速が10km/hほど上がったんです」

 タテ方向に鋭く変化するボールに、打者のバットは面白いように空を切る。この〝魔球〟を手に入れた歳内は、夏の甲子園大会では2年生ながら背番号1を背負うまでに飛躍。エースとしてチームをベスト8に導いたのである。

 本誌が歳内に話を聞いた9月9日、彼はプロ志望届を提出した。すでに非公式ながら「ドラフト3順目までの指名は堅い」と話す球団もあるという。