「紳助引退」で、一気に知れ渡った暴力団排除条例(暴排条例)が、10月1日、東京都で施行される。
それに合わせて、暴力団と親密な芸能人の「自主的排除」が行なわれている。
捜査当局のなかで、暴力団排除の前面に立つのは警視庁組織犯罪対策3課である。ここの幹部が、現在、NHKとキー局を回り、暴排条例の徹底を訴えている。
中身は、契約書に「暴力団関係者と判明した場合には、局側が契約を解除できます」という一文を入れて欲しいというもの。暴排条例は、勧告、公表、命令といった手順を踏んで、暴力団と「密接交際者」を排除する。
その際、契約書にその一文がなければ、たとえ捜査当局が勧告のうえで公表しても、暴力団関係者が開き直れば、彼らにペナルティを与えられない。そこで、警察の認定によって、自動的に契約解除できる体制を確立しようとしている。
「紳助引退」で、排除される「密接交際者」の基準はぐっと下がった。
これを「紳助ルール」という。
つまり、本人が記者会見で述べたように、たまに会って食事、店のオープンには祝儀のカネを落としてもらい、トラブルの際は解決を依頼するような「この程度の関係」はアウトになった。
週刊誌などは、「紳助ルール」を採用、「次に暴排条例で引っかかる芸能人」といった特集を組んでいる。しかしゴルフに行った、酒を呑んだ、といった親密さだけで、表社会から排除されるわけではない。
紳助は、芸能人というだけなく、何件もの飲食店ビルを持ち、そこで飲食店も経営するビジネスマンだった。
紳助は暴排条例によって排除されたわけではないが、その趣旨に沿って、芸能界を追い出された。そして、「次に狙われる芸能人」は、不動産や飲食店といった「副業」だけでなく、コンサート、グッズ販売、パチンコなど遊技機の肖像権など、暴力団のビジネスに絡み、彼らの資金源にもなっているような芸能人だろう。
警視庁は、組対3課を中心に暴排条例を見据えた「芸能班」を編成、情報収集に努めており、やがてテレビ局などと情報交換、「ブラックリスト」を作成する。
誰が、暴力団関係者とどのような交際を続け、それが「排除」に値するかどうかをチェック、“有事"に備える。
捜査当局はそれでいいだろうが、困るのは「怪しい」とされ、「ブラックリスト」に載せられた芸能人である。リスクを恐れるテレビ局によって、いつ「自主的排除」の対象になるとも限らない。
「現代の魔女狩り」だ。