ロシアが北朝鮮の債務110億米ドルを免除し、経済協力を本格化する

佐藤 優 プロフィール

 しかし、「ロシアの声」の論評から判断すると、ロシアはかつてない好条件を北朝鮮に提示し、それを意欲的に実現しようとしている。特に重要なのは、借款の90パーセントを免除した後、残りの10パーセントで合同事業を行うという点だ。この種の合同事業については、ベトナム、モンゴルでの先例がある。すなわち実効性が高いということだ。「ロシアの声」の論評の続きを見てみよう。

〈 たとえば、10億ドルをロシア、韓国が北朝鮮領内にガスパイプライン敷設を行うために投資したとしても、これくらいの額はガスのトランジットから得られる収入で2年のうちに返済することができる。

 同じだけの額を、こんどはロシア、南北朝鮮の鉄道をジョイントするプロジェクトに投資したとしよう。大西洋岸から韓国の港までをつなぐ国際貨物輸送ラインができあがれば、4年で同額の収入を上げることが可能だ。

 同様のプロジェクトや、ロシア、北朝鮮、中国の国境地帯の経済特区に参加する企業は、政治的に有利な切り札を得ることになる。北朝鮮の閉鎖性に恐れをなす外国企業も、こうした企業を通じてプロジェクトへの参加を図ることができるからだ。

 北朝鮮内でもロシアとの協力から巨額の利益を得られることを理解しはじめている。15日、ロシア天然ガス大手「ガスプロム」と北朝鮮の石油産業省は相互理解の覚書に調印し、朝鮮半島を通るガスパイプラインの建設に関し作業グループを設けることで合意している。メドヴェージェフ大統領と金正日総書記がウラン=ウデでの会談で本プロジェクトを策定する合意を結んだのは、たった3週間前のことである。

 昨日、15日、ガスプロムと韓国のコガスはパイプラインを用いたガスの韓国への供給に関し、その実現のロードマップを承認した。この際、ロシア産ガスを北朝鮮領内を通って供給することに特別の注意がはらわれている。〉(http://japanese.ruvr.ru/2011/09/16/56260366.html)

 2013年3月の大統領選挙では、メドベージェフ大統領とプーチン首相のいずれかが、調整した上で立候補する。水面下でメドベージェフ大統領とプーチン首相の間で権力闘争が展開されている。ここで大きなカードになっているのが天然ガス・カードだ。

 メドベージェフ大統領は、ロシア産天然ガスを北朝鮮と韓国に送るという案を支持している。北朝鮮をエネルギーによって支配することで、ロシアの影響力を政治的にも拡大できるという思惑がある。北朝鮮もこの思惑を理解した上で、エネルギーを安定的に確保し、金王朝の安定を図っている。メドベージェフ大統領のエネルギー戦略に日本は含まれていない。

 これに対してプーチン首相は、福島第一原発事故で脱原発依存政策をとることになる日本に液化天然ガス(LNG)を追加供給を提案した。日露の経済提携を強め、中国を牽制していこうとする戦略だ。プーチン首相の北朝鮮に対する忌避反応は強い。

 日本嫌いのメドベージェフ首相と北朝鮮嫌いのプーチン首相の性格が、天然ガス・カードの切り方にも如実に反映している。

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著者:佐藤優
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