平松邦夫×内田樹「『教育はビジネス』という勘違いがクレーマー親を生む」

「教育は誰のためにあるのか」とことん語ろう 第1回

 「神様」である子どもや親たちから教育方法や教育技術や教育理念についてクレーム付けられるということは、飲食店で「なんだこれは! こんなもの食えんぞ」「すいません」っていう関係と同じになって、先生の方がまず「すいません」から話に入っちゃうんです。

 消費者が売り物にご不満を抱いてらっしゃる、というふうに考えたら、どんな言いがかりであろうと、とりあえずは頭下げなきゃいけない…そういう発想が教師自身に内面化しちゃってるんですね。実際それが正しいってみんな思ってるんですよ。教育現場で。僕はそれに反対なんです。

「ニーズ」や「数値化」なんかで教育の成果は測れない。

平松: ただ、先生、ちょっと異論いいですか。公立の場合はいいんですが、私学になると「売り物」がいるわけですよね。あるいは何か特化したもの。そういった教育の「質」を要求するほど、高度なクレーマーはいないということですか。

内田: 教育の質に関してですか? ないです。質に関するクレームなんて聞いたことないです。文句つけて来るのは成績と単位だけです(笑)。

平松: 私学っていうのは当然公立よりも授業料が高くて、それに高い金払ってるんだから、もうちょっときちんと教育しろよっていう部分じゃないんですね。

内田: かつてないですね。僕の知る限りでは。

平松: 同じクレームなら、まだそういった内容の方がいいわけですか。

内田: それはね。いや、教育の質について議論に来られたら、こちらも十分に反論する用意があるんですけれど、あいにくそんなの来たことないです。子どもが受けている教育の質なんて興味はないんです。だいたいそんなことは学校に来て実際に授業を受けないと分からないですから。親に分かるのは数値だけなんですよ。だから自分の子どもの点数が低いとか、単位が取れなかった、卒業できないとか、そういうことでしか反応しない。

瀬尾: 実は去年の年末に「現代ビジネス」で田原総一郎さんとソフトバンクの孫(正義)社長との対談があったんですね。電子教科書が大きなテーマだったんですけど、その時に会場で150人ぐらい先生が集まっておられて、少し意見を聞いたんです。

 その中で、ひとつショックというか、驚いたのは、ある先生が「私たちは教育現場でニーズに応えようと思って子どもを教育している」というようなことをおっしゃったんですね。「ニーズ」という発想で教育が行われてることに少し驚いたんです。

内田: それはもう、まさに世論全体がそういう言葉遣いでしか教育を語りませんからね。大学でもそうですよ。

 私学の場合だと、やって来るコンサルとか、予備校とかの人たちは、「お客様のニーズにどう応えるか」という話ばかりする。僕は「そんなもんねえよ」っていうんですけどね(笑)。

一同: (笑)