オヤジ伝説検証隊 「神居古潭」のオヤジ伝説

神居古潭
焼き方から食べ方まで、聞けばなんでも教えてくれる、店主の小川正美さん(62歳)。ぶっきらぼうだが、実は優しい
「神居古潭」のオヤジ伝説
「席に着くなり、勝手に頼んでもいない肉が出てくる」「塩で食べるように言われた肉をタレに付けたら、スゴイ形相でにらまれた」「肉を焦がすと店主が露骨に嫌な顔をする」「肉をひとり2人前以上頼まないと、つまみやご飯ものなど、サイドメニューが注文できない」

カウンターにパンチパーマ風の〝強面〟の店主がいた!

 「神居古潭」は、開店して26年というジンギスカンの老舗。「焦がすと露骨に嫌な顔をする」店主がいるというので、店のホームページに書かれていた“焼き方"を予習して、私、ライター藤倉慎也が友人とともに訪れた。

 JR中野駅北口の路地にある小さな店を、平日の開店直後に覗いてみる。店舗の1階が8席ほどのカウンターで、その向こうではパンチパーマ風の髪形をした店主がしきりに、もやしのヒゲを取っているところだった。

藤倉「なるほど、強面だ!」

 カウンター席に座る。壁には手書きで、ホゲット(生後1年未満の肉)、ラムなど部位別のメニューが貼られている。ところが、飲み物を聞かれただけで、すぐさま炭火のコンロが目の前に置かれ、そのあと銀の皿にのった赤身の肉が当たり前のように出て来た。注文は聞かれてませんが?

藤倉「(おそるおそる)これは?」

店主「ホゲット!」

 ぼそっと言うと、別の仕込みに取り掛かる。

たっぷりと野菜が盛られたジンギスカン。肉は「ホゲット」(並800円)、「北海道産ラム肉」(1600円)などがある 

藤倉「頼んでもいないのに、勝手に肉が出てくるというネットの書き込みはこれだったんだな」

 と、心の中で納得する。

 仕方ないので、出された肉を食べながら友人と話していると、

主人「口ばかり動かしてないで、野菜を焼く、とか・・・」

 とダメ出しされてしまった。小声ではあるけど、自らに語るようにボソッと発する口調には、けっこう威圧感がある。

 後から若い男性3人組が入店。メニューを見ながら、「マトンとラムってどう違うんだっけ?」と言い合っていると、ひと言。

主人「そんなことが分からないんだったら、安い肉から食べたほうがいいな」

 これには、3人とも顔を見合わせて、困り顔だった。

 出来た肉を食べようとしたが、ここで待ったがかかる。

主人「表面だけ焼いたら、鉄板の縁の野菜にのせて蒸らすんですよ。野菜の温度が約100℃。1~2分でミディアムレアに焼きあがるから!」

 独自のこだわりに絶対的な自負があるようだ。

 後日、主人の小川正美さんに話を聞いてみた。

―焼き方とか、いろいろ口出ししますよね?

 最近は言わなくなったほうだね。人の話を聞かない人も多いもの(笑)。特に、北海道出身の人は聞く耳持たないね。「北海道では野菜の上に肉をのせて焼くんだ」って、野菜と肉をごちゃ混ぜにして焼いてる。それじゃぁ、肉に火は通らない。

―焦がすと嫌な顔をするとか。

 せっかく、普通なら手に入らないようないい肉を出しているのに、焦がされたんじゃね。食べるのはお客なんだから、構わないけどね。

―美味しい羊肉はなかなかおめにかかれませんよね。

 特に、春先に出す生後45日以内の「ミルクラム」なんて、日本で数頭しか出回らないよ。そういうのを知ってるお客さんなんて、羊に対してお経をあげてから、有難く食べてるくらいなんだから。

東京都中野区中野5-55-9
☎03-3385-0371/営18時~22時L.O./休水/カウンター8席、2階テーブル5席×2卓 計18席/カード不可/予約できる/JR中央線ほか中野駅北口から徒歩5分

―肉を2人前以上頼まないと、ほかのものが頼めない?

 まずはしっかり肉を味わってもらいたいの。時には、肉を食べながらご飯を食べたいなんていう客もいるけど、『そんなに米が食べたいんなら、スーパーで冷凍ご飯でも買って来な。レンジでチンくらいはしてやるから』っていうんですよ(笑)。

 秋田出身。穏やかな話っぷりのなかに、創業26年の自信をしっかりと覗かせていました。

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